求む!路面電車とバスの「二刀流」運転士 人手不足を打開する両備グループの人事戦略
求む!〝二刀流運転士〟。岡山県を中心に交通事業、情報通信技術(ICT)事業などを展開する両備グループの岡山電気軌道(岡電、岡山市中区)は路面電車とバスの両方を運転する職種を新設し、募集を始めた。かつてバスや電車の運転士は子供が憧れる人気の職種だったが、近年はスポーツ選手、医師、ユーチューバーなどにとって代わられた。岡電社長の小嶋光信両備グループ代表は「乗り物の運転手が再び、子供たちがなりたい職業といわれるよう、夢と誇りが持てる職種にしたい」と意気込む。 【写真】「たま電車」と「夢二黒の助バス」の両方が運転できる乗務社員が誕生する ■「2024年問題」も逆風 二刀流運転士の採用予定数は10人で、原則として40歳以下。まずは岡電バスに配属され、大型二種免許を取得し、指導期間を終えると1年間、路線バスに乗務。その後、電車部に転属され、国家資格である「動力車操縦者運転免許(乙種電気車運転免許)」の国家試験に備える教育期間に入り、免許の取得を目指す。専任運転士になれば毎月5万円の二刀流手当が支給され、基本的に6カ月交代でバスと電車の乗務を担当するという。 「プロドライバーはヒーローだと信じている」と話すのは岡電の大林玲嗣常務だ。ただ、その言葉とは裏腹に、運輸交通業界の人手不足は深刻化の一途をたどっている。 警察庁の運転免許統計によると、令和3年の大型二種免許の保有者は約82万5千人で、20年前の7割以下の水準にまで落ち込んだ。同年の保有者のうち65歳以上は約46%と、20年間で約9ポイントも高齢化が進んだ。新型コロナウイルス禍の影響でモチベーションを保てずに辞める人も増え、先行きが不透明だったこともあり、新規採用を取りやめる事業者も相次いだ。 両備グループでも平成31年3月に2067人だった路面電車やバスなどの乗務社員数は令和5年3月には1727人に減少。運転士の時間外労働時間の上限が規制される「2024年問題」も大きな逆風となり、人手不足に拍車がかかった。 ■人材掘り起こしに成功