夫は双極性障害で会社を休職。パートナーが心を病んで家庭崩壊の危機を迎えた時、妻の心境は
パートナーのため息が増えた、食欲がなさそう、朝起きるのがつらそう。 もしこのまま心を病んでしまったら……そんな不安を感じたことはありませんか? 【マンガを読む】彩原ゆずさんの『夫婦で心を病みました』を最初から読む 夫が双極性障害になり、それを支えるうちに自分自身も心のバランスを崩してしまった経験を持つ漫画家の彩原ゆずさん。その経験をコミックエッセイ『夫婦で心を病みました 優しい夫が双極性障害を発症したあの日から』で詳細に綴っています。 夫の休職にはじまり、風俗通い、妻への暴力、度重なる浪費……次々と襲い来るトラブルは、一体どのように始まったのでしょうか。その経緯を見ていきましょう。 ■『夫婦で心を病みました』あらすじ 彩原さんはふたりの子どもを出産し、仕事を辞めてフリーのイラストレーターをしていました。彩原さんが仕事と幼い子どもたちの育児に追われている間、夫は深夜まで家で仕事をしていたり、休日だというのに上司から電話がかかってくることもありました。 その頃から、夫のため息が増えていき、食事を残したり夜中に眠れずに起きていることが増えました。あまり愚痴をこぼすことのなかった夫から、上司が怒鳴る、雰囲気が悪いと会社への不満が増えていきました。 目に見えて痩せていく夫にギョッとした彩原さんは、半ば無理やり夫を病院に行かせます。その時「うつ病」の診断をされ、医師に休職を薦められます。そして、夫の3ヶ月の休職期間の間、彩原さんも不安から来るストレスで少しずつ心のバランスを崩していくのでした。 休職期間が明け、夫は仕事に復帰しました。しかしすぐに飲み会に呼ばれるなど忙しくなっていき、今度は浪費が激しくなる、物に当たるようになる、やけに饒舌になって妻を責めるようになる……などの症状が出てきました。 そしてある日、彩原さんは偶然、夫の財布から風俗店のポイントカードを見つけてショックを受けます。 夫への不満を抱える日々の中、激しい口論の最中に夫に暴力を振るわれた彩原さんは、追い詰められてしまいます。危うくベランダから飛び降りそうになったところを幼い子どもに止められて我に返り、保健所の相談窓口に助けを求めました。そこで面談した精神科医に、夫の双極性障害の可能性を指摘されるのでした……。 夫婦の壮絶な闘病の日々を綴った彩原さんに、当時のお話を伺いました。 ■彩原ゆずさんインタビュー ――はじめに、この作品に込めた思いをお聞かせください。 彩原ゆずさん:夫がうつ病と診断され、人が変わったようになった時、私は金銭的にも精神的にも「自分さえ我慢すればいい」と思い込み、どんどん気持ちが病んでいきました。そんな経験から、家族が心の病を抱えた時に一人で抱えこまないでほしいと伝えたくてこの作品を描きました。 そしてのちに夫は双極性障害だとわかるのですが、私たち夫婦の場合は病気を知ることによって道が開けていきました。ですので、自身や家族の病気を知ること、医師に普段の状態をしっかり話すことを大切にしていただきたいとも思っています。 ――夫のユウタさんがうつ病と診断される以前に、ユウタさんの様子にどのような変化が見られましたか? 彩原ゆずさん:まずため息が増え、眠れないといった症状が出てきました。朝起きたらすぐに落ち込んでいる様子が見られて辛そうでした。それから食欲がなくなり痩せていく…といった変化がみられました。 ――ユウタさんがうつ病だと診断された当時の彩原さんの率直なお気持ちを教えてください。 彩原ゆずさん:やっぱり!と思いました。実際はうつ病ではなく私の知識も乏しかったのですが、自分がイメージしていたうつ病の症状に似ていたので、間違いなくそうだろうなと思っていました。ここまで具合が悪くなる前に身体を休めさせれば良かったな、とも思いました。 ――不機嫌モードで周囲に当たり散らすようになってしまったユウタさんとどのようにコミュニケーションをとっていたのでしょうか。 彩原ゆずさん:一緒にいると安心する。そんな人だったのですが、この時期の夫は怖かったです。私は大声を出す人や不機嫌を露わにする人にかなり苦手意識があり、いつもビクビクしていました。イライラモードの時は、夫の言葉を否定すると怒りだし家の空気も悪くなってしまうので、否定をせず聞き手役になることが多かったです。 ――最後に、今現在、心の不調や悩みを抱えながら生きている人に、メッセージをお願いします。 彩原ゆずさん:私は当時誰かに自分の状況を話すことが難しく、恥ずかしさもあったりしてなかなかまわりに相談できずにいました。ただ医師や誰かに話すことが状況を改善させるきっかけになるかもしれないので、一人で抱え込まずに相談してほしいです。 あまりにも苦しいと自分のために何かしようという考えも出てこないかもしれないけれど、誰かに頼ること、助けを呼ぶこと、専門的な場所に相談することを選んでほしいと心から思います。 ※本記事は2023年2月掲載の取材記事を再構成し、編集したものです。 取材=宇都宮 薫/構成・文=レタスクラブ編集部M