コロナはにくんでも、豚まんはにくまんで下さいーー支援物資にもなった町中華の名物、誕生の軌跡
康平さんが頼りにするのが、地元の農園・ファーム白石代表の白石長利さん(39)だ。震災直後の風評被害で、泣きながら野菜を廃棄した白石さん。康平さんは、その畑で口にした自然農法のキャベツの味を忘れることができない。 「本気で作られた食材は本気で料理しないと失礼。当時はまだその覚悟がなかった」 修業時代は野菜を運んでくる人を“業者”と呼び、缶詰入りの野菜も無造作に使っていた。しかし福島で震災に遭い、白石さんら地元農家とつながることで、自然に“生産者さん”と呼ぶようになる。地元野菜の魅力と自らの技の融合を必死に模索し、父から受け継ぐ華正樓の味をさらに豊かにした。「豚まん」はその結実のひとつだ。 「もし豚まんがなかったら、何をしているだろう」 康平さんの今の夢は、息子に誇れるよう、豚まんを長く愛されるロングセラーに育てること、だ。 --- 杉山元洋(すぎやま・もとひろ) 1971年生まれ。二輪車と大衆酒場を愛する下町育ちの編集者兼ライター。男性情報誌、ビジネス、生活情報、グルメなど、幅広い分野の雑誌・ウェブ記事制作に携わる。