日本独自の規格の軽自動車 「3395×1475」にあらゆる車種がそろう小宇宙
●車高「中クラス」 ワゴンR/ムーブ/N-WGN
車高「中」のクラスはワゴンRとムーブ、N-WGNのクラスだ。1970年代にフォルクスワーゲンのゴルフが登場して以降、小型ハッチバックでは、車高を上げて乗員の背中を立てて座らせ、室内空間をより広く使う手法が確立した。 本来スペースの限られた軽にこそ有用な方法であったにも関わらず、その流れはなかなか軽には波及しなかった。スペース効率を極限まで追求した商用ベースのワンボックスが先に存在していたせいもあった。乗り心地やデザイン、衝突安全などの乗用車的要素とユーティリティの両立が軽に求められるようになるまでに時間を要したのである。 しかし1993年にデビューしたワゴンRは、そのトールボディのワゴンという理にかなったコンセプトで爆発的に売れた。東京モーターショーで欧州メーカーの首脳がワゴンRをつぶさに観察していくほどの影響を与えた。フィアットでは現在も日本の軽自動車を購入して真剣に研究しているほどだ。もちろん海外だけでなく、国内でもその影響は大きかった。ダイハツはワゴンRのヒットに対抗してムーブを作り、以後ずっとライバルとして戦ってきた。 現在軽の主流と言えるこのクラスのメリットは、走行性能や乗り心地との按分を見ながら室内空間を出来る限り広げた点にあり、乗用専用設計で初めて4人乗車を現実的にしたクラスだと言える。人だけでなく荷物も多少は積めるという点からも一番バランスの取れたクラスだ。ただし、機械式の駐車場の制限は全車例外なく引っかかる。また、前述の通り車高「低クラス」においてN-ONEの様に「1550の壁」を突破する動きが強まれば、下からの突き上げに最もさらされることになる。車高低クラスと車高中クラスは軽自動車の主流の座を巡る激しい争いに突入する可能性がある。
●車高「高クラス」スペーシア/タント/N-BOX
車高が高いクラスはスペーシア、タント、N-BOXのクラスだ。多少乱暴に言えばこのクラスは乗用車の中で荷物を積む性能に特化したクラスと言える。各社の訴求を見てもわかる通り「塾帰りの子供を迎えに行って、自転車がそのまま積んで帰れます」がポイントだ。結果、車高は1700ミリメートル代に突入し、重量も重い。車高を1735ミリメートルで踏みとどまったスペーシアはそれでも840キログラムで踏みとどまっているが、タントとN-BOXは900キログラムのラインを踏み越えた。仕様と装備によっては1トンを超えるモデルもある。 重量が重ければ燃費でも動力性能でも厳しいし、重く高い上屋を支えるために、バネは硬くせざるを得ないため乗り心地も犠牲になる。荷物を積むと言う明確な目的がある場合は選択の余地がないが、大きいことはメリットだけでなくデメリットもあると言う点はよく検討すべきだろう。