日本独自の規格の軽自動車 「3395×1475」にあらゆる車種がそろう小宇宙
●商用車ベースのクラスとその他
「+1種」のクラスはエブリィ、アトレー、バモスが属する。前述の通り軽トラがベースになっているので積載性が飛びぬけている。900×1800ミリメートルのベニア板が平置きできるレベルの荷室を持っている。そのスペースはフロントセクションの短縮で稼ぎ出されているので、ぶつかった時にショックを吸収するスペースは限られる。元がプロ機材なので、とにかく積めることが最優先で設計されているのだ。 さて、これらのモデルには、商用ベースモデルを除いてそれぞれ派生モデルがある。車高「中」と「高」では、基本的には同じクルマでありながら、フロントデザインが2種類ずつ用意される。ファミリーユースの穏やかな顔のモデルと少しいかつい顔つきに仕立てた若い男性ユーザー向けだ。車高「低」では女性向けに全体的に優しくオシャレにリデザインにした派生モデルがあり、イメージを変えるために全く別の名前がつけられている。
また近年では実用性を重んじるこれらのモデルとは別に、軽の高付加価値モデルが話題を呼んでいる。オープンスポーツのダイハツ・コペンとSUVのスズキ・ハスラーだ。どちらもメーカーの予想を遥かに上回る売れ行きで、長期納車待ち状態になっている。現在のところこうした高付加価値モデルを持たないホンダもS660というスポーツモデルを開発中である。 軽自動車の世界は実用性一本やりの主流だけでなく、新たな時代に入ろうとしている。バブル期には軽にも様々な高付加価値モデルがあったのだが、それらは景気の縮小とともに淘汰されてしまった。新世代の高付加価値モデルはしっかり根付くのか、再び淘汰の時代を迎えるのかはわからない。 しかしそうした幾多の時代を如実に反映しながら軽自動車は日本人の生活を支える自動車としてずっと存在し続けて来た。自動車メディアがそうした軽自動車について取り上げる機会は決して多くはないが、これまで書いた通り世界的にユニークで様々な面白い面を持つ自動車のひとつのジャンルなのだ。ここ数年の軽自動車の実際のインプレッションは、自動車評論家の森慶太が書いた『別冊モータージャーナルVol.5』などが参考になるかも知れない。 (池田直渡・モータージャーナル)