日本独自の規格の軽自動車 「3395×1475」にあらゆる車種がそろう小宇宙
主要モデルは「3種+1種」
ボディサイズが同じなら、バリエーションは自ずから高さで決まることになる。各社の主要モデルを見てみると基本的に車高別に低、中、高と3種類のボディが作り分けられている。そしてさらに積載性を求める層にむけて商用車、つまり軽トラをベースとしたモデルがあり、3種+1種という構成になっている。ちなみに4種でなくて3種+1種としたのは、商用車ベースモデルは良くも悪くもヘビーデューティなので乗用ベースの3種のモデルとは別枠と見た方が良いからだ。乗り心地やデザイン、洗練度、クラッシュセーフティが劣る一方、丈夫で大量の荷物が積める。 現在この3種+1種のバリエーションを全部持っているのは、スズキ、ダイハツ、ホンダの3社だけだ。3種+1種の機能的すみ分けはどのようになっているのだろうか? ポイントは重量だ。言うまでもなくクルマはエンジン性能が同じなら小さく軽いほどよく走り、燃費もいい。ただし小さく軽ければスペースでは不利だ。その利害得失をどう設定するかがそれぞれのモデルの差になっているのだ。
●車高「低クラス」アルト/ミラ・イース/N-ONE
車高が低いクラスは軽自動車の原点だ。ワゴンRがでてくるまでの軽乗用車はこのクラスしか無かった。 スズキのアルト、ダイハツのミラ・イース、ホンダのN-ONEなどで構成され、基本的な用途は1人または2人乗りで、原則的にはリアシートは補助的なものと割り切るものになる。一番のメリットは重量の軽さだ。特にアルトとミラ・イースは700キログラム代前半に収まっている。軽くて車高が低ければコーナリング時の遠心力による車体の傾きが小さいから上屋の重さを支えるためにサスペンションを硬くする必要がない。だから乗り心地にも優れている。もちろん燃費や動力性能にも有利だ。乗るのが一人か二人で荷物が多くないという想定なら、軽自動車の小さく軽いというメリットを最も活かし易いのはこのクラスだろう。価格面のメリットも一番大きい。 N-ONEは後発でこのクラスに参入するに当たって、戦略的基本骨格(プラットフォーム)展開を図っている。軽自動車の生産を鈴鹿工場に集約し、3種のモデル全部を同じホイールベースに揃えて来た。つまり生産資源を集約共用化することで、人件費の高い国内工場のコストパフォーマンスを最大化する作戦だ。小は大を兼ねることができないから、車高の高いクラスが基準になってホイールベースが長くなる。ホイールベースが長ければ後席の空間を取り易く、これまでのように補助席レベルに甘んじる必要はない。その長所を活かし、車高の低いクラスで最もリアシートが使えることを狙う考え方になるのはよくわかる。 そこでライバルより車高を高くして空間を大きく取ることにしたのだ。こうした空間設計のために、アルトと比べるとN-ONEは75ミリメートルも車高が高く、引き換えに重量は130キログラム重くなっている。つまり商品性としては車高「低クラス」と車高「中クラス」の間を狙っているわけだ。にも関わらずデザインがスペースの優位を打ちだした形でなく、パーソナル感の強いものになっているのがホンダの面白いところだろう。 N-ONEで気を付けたい点はその車高がこのクラスで唯一1550ミリメートルを超えていることだ。何の数字かと言えば機械式駐車場の高さ制限だ。現在では機械式駐車場でも制限が2メートルまでのものも増えてきているが、旧来の機械式駐車場の基準値は1550ミリメートルだった。なので高さを気にせずにどこでも停められる自由度を確保するためには1550ミリメートル以下である必要があるのだ。 次世代のアルトとミラ・イースがスペースを広げるためにN-ONEに追随するのか、従来の「軽く低い」コンセプトと駐車の自由度を重視するのかが注目される。