「色々あるけど欲しいものがないヴィレヴァン」と「自分のための場所と感じるタワレコ」…巨大カルチャー企業の明暗を分けた「本質的な差」とは?
タワレコが「オンライン空間」の侵食を背景に「リアル空間」の価値を研ぎ澄ませていったのに対し、ヴィレヴァンはむしろその侵食に対応することができなかった。この点でも両者は対極的であるといえる。 いずれにしても、タワレコが「推し活」に対して「選択と集中」をしてその業績を回復させているのに対し、さまざまな理由から「選択と集中」ができていないのがヴィレヴァンである。 コアなファンより、マスなファンをターゲットにしたことで、どちらも失ってしまうこととなった。
その点で、同じ「カルチャー企業」でありながらも、対極にあるのが、この2つの企業であると感じられるのだ。だから、タワレコのニュースを聞いたときに、ヴィレヴァンのことを思い出してしまったわけである。 ■「選択と集中」がにぎわいを生み出す タワレコ復活の要因となった「選択と集中」は実は、現在多くの商業施設や観光地などで、にぎわい創出のカギとなっている。 例えば渋谷PARCOでは、「Nintendo TOKYO」「ポケモンセンターシブヤ」といったIPコンテンツを扱ったショップや、地下1階にあるレストランフロア「CHAOS KITCHEN」(「食・音楽・カルチャー」をコンセプトに、飲食店と物販店が混在している)を設けることで、訪日客に支持される施設となっている。いろいろある日本のカルチャーの中でも、訪日客に馴染みのあるコンテンツに重きを置いているのがポイントだ。
また、やや唐突に聞こえるかもしれないが、現在多くのインバウンド観光客を抱え、日本の観光地の成功例といわれている北海道「ニセコ」も、この「選択と集中」によってにぎわいを作り出すことに成功した例だ。 『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか 「地方創生」「観光立国」の無残な結末』(講談社+α新書、2020年)の中で著者の高橋克英はニセコが観光地として成功した理由について、そのコア客層である「外国人富裕層」に向けた「選択と集中」の戦略が功を奏したからだと分析している。