「色々あるけど欲しいものがないヴィレヴァン」と「自分のための場所と感じるタワレコ」…巨大カルチャー企業の明暗を分けた「本質的な差」とは?
「コア」とは、「推し活をする人々」や「ファン」のことだろう。まずは、その中心にいる人々を「選択と集中」し、徐々に「マス」に広めていく。マーケティング的にいえば、「ターゲティング」になるが、それをかなり意識的に行っているわけだ。 ■ヴィレヴァンが行えなかった「選択と集中」 では、なぜこのニュースで筆者が「ヴィレヴァン」のことを思い出したのか。 実はヴィレヴァンは、タワレコが成功している「選択と集中」にことごとく失敗しているように見えるからである。そして現にヴィレヴァンの業績は芳しくない。
2024年5月期の決算をみると、売上高は約247.9億円で、前期の約252.8億円から約2%の減収。営業利益は9.15億円の赤字で、11.4億円もの最終赤字となっている。コロナを明けても、復調していないのだ。 また、(他業態を含む)店舗数も、じわじわと減少し続けている。 この原因にはさまざまなことが指摘されている。 例えば、私が以前、本サイトにて「ヴィレッジヴァンガード全店まわるひと」(ヴィレ全)さんにインタビューしたときには、その不振の原因は、大きく分けて2つあると語られていた。
(1)ショッピングモールなどへの出店を進めたことによって、「ヴィレヴァンらしさ」が普通のものになってしまった (2)人材教育が十分にされなかったことで、ヴィレヴァンを支える店員にサブカルの知識が薄く、普通の売り場しか作れなくなってしまった おそらく、ヴィレヴァンに通っている人ならばどちらも理解できるのではないだろうか。 ヴィレヴァンが相手にしてきたのは、創業者の菊地敬一がいうとおり「B級なもの」、つまり「メインカルチャー」に対する「サブカルチャー」(サブカル)であった。それらを好む層に向けて「選択と集中」をしてきたことが、ヴィレヴァンのコアなファン層を作ってきた。
しかし、地方への出店の拡大はその「濃さ」を薄め、「選択と集中」を拡散させてしまったわけである。 ■デジタル時代に対応できたか否か さらに、私自身はこの問題を考えるときに「そもそも、サブカルに『選択と集中』しようにも、サブカル自体の定義が拡散してしまった」ことも重要だと思っている。 特にインターネットの登場以後、個人の好みは拡散し、かつてはなんとなく「サブカルチャー」と呼ばれて共通の趣味を指していた言葉の定義そのものが曖昧になってしまった。そうなれば、サブカルに「選択と集中」しようにもできない、そんな背景もあると思う。