森からどのような経済をつくるのか。森林ディレクター奥田悠史が語る15年後
自然と共存していくための、変革期におけるデザイン
日本の国土の約7割は森林で、そのほとんどが、手入れが行き届いていない状態にある。林業の担い手の減少や木材価格の低迷など、さまざまな背景はあるが、根底には森林が薪やエネルギー資源としての利用がされなくなったという現実がある。 広葉樹林の整備や保全をしよう、針葉樹一斉林から針葉樹と広葉樹で構成される針広混交林への転換を進めようといった大きな方向性はある。しかし、その針広混交林でどうやってビジネスをつくるのかは、実はあまり議論されていない。 そんな状況下だからこそ、いま森に対する「デザイン」が必要なのではないだろうか。森の面白さや豊かさを、どう再編集して、プロダクトやサービスにしていくのか。お金にすることが難しかった森から、どのように経済を生み出していくのか、そのことが重要な課題となってきているのだ。奥田は最後に次のように結ぶ。 「僕らにできることは、『自然への知識や経験 × 編集とデザイン』を組み合わせて、どんな森になっていくと良いのかを考え、1つずつ目の前に現実をつくっていくことです。森や自然をその対象だけで考えるのではなく、周辺に生きる人たちの思いや、その土地でかたちづくられてきた文化といった背景までを紐解いて、森の所有者にとっても、行政にとっても、そこで暮らす人たちにとっても嬉しい状態をデザインする。それが、『森の企画室』がやりたいことなのです」 奥田悠史(おくだ・ゆうじ)◎1988年、三重県生まれ。信州大学農学部森林科学科卒。大学在学中に世界一周旅行へ。卒業後、編集者やライター、デザイン事務所を経て、2016年に「森をつくる暮らしをつくる」を理念に掲げる「やまとわ」の立ち上げに参画。森の面白さや豊かさを再発見、再編集して、プロダクトやサービスにして届けている。
増村 江利子