返済総額1500万円増も現実に? 35年変動・8000万円のペアローンを組んだパワーカップルを待つ金利上昇の深刻な影響
(牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー) ■ 好調だったタワマンはどうなる? 【表】借入金額8000万円・期間35年変動金利の返済額シミュレーション(筆者作成) 日本銀行は今年7月の金融政策決定会合で政策金利について0.1%から0.25%へ引き上げることを決定した。2016年1月から今年3月まで8年以上継続されてきたマイナス金利政策を解除したことに続く金利の引き上げは金融マーケットに衝撃となって伝わった。 敏感に反応したのが株式市場で、7月11日に4万2224円の年初来高値を付けていた株価は8月5日終値が前日比4451円下落の3万1458円と過去最大の下落幅を記録した。 その後株価はやや持ち直しているが、この影響がじわじわと不動産マーケット、とりわけ低金利に踊ってきた不動産投資マーケットやマンションマーケットに及び始めている。 不動産の中でも投資需要と住まいとしての実需の双方を兼ね備えて好調だったタワーマンション(タワマン)にとって金利引き上げの号砲は、今後どのような影響を及ぼすのかを考えてみよう。
■ 8000万円のローンを組んだパワーカップルでシミュレーションすると… 東京の湾岸エリアのタワマンはここ数年で分譲価格が1億円の大台を超え、物件によっては2億円超のものまで出現している。こうしたタワマンを実需で購入している層は世帯年収で1500万円超のパワーカップルだ。 彼らは都心の会社に通いやすいことを一番の条件とする「会社ファースト」の住宅選びをしてきた人たちだ。夫婦ペアローンを駆使して、限度額いっぱいまで住宅ローンを組んでいる例も多い。 仮に世帯年収1500万円のパワーカップルが8000万円、期間35年、元利均等返済、変動金利型の住宅ローンを組んでいるケースを考えてみよう【次ページ図表参照】。 借入時点での金利を0.5%とすると毎月の返済額(ボーナス返済なし)は20万7668円である。年間の返済額は250万円程度。決して少ない額ではないが、夫婦での返済に支障はないレベルである。