返済総額1500万円増も現実に? 35年変動・8000万円のペアローンを組んだパワーカップルを待つ金利上昇の深刻な影響
■ 政策金利1%の上昇で返済総額は1500万円増加 今回の利上げによって変動金利型住宅ローンの金利は主要各行ではおおむね0.15%程度の引き上げとなっている。変動金利型住宅ローンは銀行各行が設定する短期プライムレートと呼ばれる最優遇取引先に対して期間1年未満のローンに適用するレートに連動している。 そしてこの短期プライムレートは日本銀行が決定する政策金利に連動している。短期プライムレートは9月に年1.475%から1.625%と17年ぶりに引き上げられており、今回はこの上昇幅に則って変動型金利の引き上げがアナウンスされたのである。 このパワーカップルの事例でいえば具体的には、0.15%の引き上げによって毎月の返済額は21万3015円となり、月額5347円の負担増となる。年間での負担増は6万4164円程度なのでこの値上げによって大きな影響を受ける世帯は少ないものと思われる。 だが日本銀行では今後の物価の上昇状況、賃金引き上げの状況を鑑みながら、段階的に政策金利を引き上げていくことを考えており、今後1%程度まで上昇する可能性が強いとみる向きが多い。 この見通しに沿って1%程度の政策金利上昇を見込むと、住宅ローン返済は、金利1.5%として月額24万4947円。当初返済額よりも3万7279円の負担増となる。 5000円程度であれば、やりくりは難しくなかったものが、この負担増の影響は大きなものとなる。年間返済額は44万7000円増の293万9000円にもなる。またこの金利が将来続いた場合のローン返済総額は1億287万7000円。当初の返済総額8722万円と比べて1565万円もの大幅増になる。
■ ローン金利2%になると耐えられない世帯が出現する可能性 年収1500万円といっても所得税や住民税、社会保障費などを除くと手取りは1000万円程度。この中からマンションの管理費、修繕積立金、生命保険、駐車代、自動車ローンなど多くの経費がかかってくる。 今後の生活物価の値上がりや教育費の負担増、さらには増税、社会保障費負担増、管理費や修繕積立金の値上がりなどを考え併せると将来設計にかなりの影響を与えることになりそうだ。 あまり考えたくはないだろうが、ローン金利が2%になるとその負担増に到底耐えられない世帯が出現してもおかしくはない。そのくらい金利引き上げの影響は深刻なのだ。 夫婦ペアローンを組んでいる場合には互いの負債に対して連帯保証を負っているので、どちらかの勤め先の業績不振による収入減、病気などによる休職などのリスク、さらには離婚する場合でも戸籍上は別れることができてもローン返済を免れることはできない。 >>この記事の続きは「タワマン投資は完全に曲がり角「物件価格1億7700万円・表面利回り2.34%」で元も取れず…外国人投資家も冷め始めた【利上げとタワマン:不動産投資編】」へ
牧野 知弘