壊れなくなったクルマ 意外に奥深い「ねじ」の話
「ねじ」は多くの工業製品にとって必要不可欠な部品だ。しかしながら、ねじが部品を固定する理屈は意外に知られていない。今回は高精度なエンジンパーツのために進歩したねじの話を書いてみたい。 【写真】“スーパーカーの新境地” 新型NSXの技術は何がすごいのか? 部品を固定する方法には色んな方法がある。自動車の場合、「溶接」と「ろう付け」、様々な「クリップ」に加え、「ねじ止め」の4つが多くを占める。溶接とは母材を溶かして2つ以上の部材を1つにする方法。主にシャシーやボディなど高強度が求められる部分に使われる。ろう付けとは母材と母材を溶かした金属を接着材として繋ぐ方法。こちらは接着用の金属に母材より融点の低い金属を使うため、溶接ほどの強度が出ないが、接着材は比較的柔らかいので、後で切削によって形状を整えたい部分や、ハンダの様に電気的に接続したい場合に用いられる。クリップとは主に樹脂パーツを装着する時に用いられ、素材の弾性を利用して、はめ込んで引っかけるケースや、スピードナットの様にタップねじ(木ねじなどねじ山を切り進んで固定するねじ)と組み合わされるケースが多い。
ねじの原理はくさびと同じ
ねじ止めは、接続強度が高く、かつ後で分解や再組み立てすることが可能なので、極めて多くの部品組み立てに使われている。実は特性としてはクリップに似ている。後述するが、2つの部材間にボルトの軸でテンションを掛けて押しつけているのだ。その原理はくさびである。
オフィスなどでドアを開けたまま固定したい時、くさび状のドアストッパーを使うことがある。図1の状態では、ドアの上下動は蝶番(ちょうつがい)によって規制されているが、くさびはそれを押し上げようとする。この押しつけ力によってドアは固定される。仮に蝶番が上下にスライドして上下動を規制しない物だとすれば、くさびはドアを持ち上げてしまい、固定することが出来ない。もちろんドアの自重そのものが押しつけ力を発生するので、重い材質のドアならくさびの機能は成立するが、ドアが極めて軽量ならくさびではドアは固定できなくなるはずだ。実はねじの仕組みはこのくさびと同じだ。