中国の輸出税還付廃止、中国製アルミ圧延品に値上げ圧力
中国政府がアルミ製品に対する輸出税還付の廃止を決めたことを受け、中国製アルミ圧延品に価格上昇圧力がかかっている。すでに複数の中国メーカーが海外顧客に加工賃改定交渉を始めた。日本や東南アジアで安値の中国製品と競合していた日系アルミ圧延メーカーにとっては商機となる可能性がある。 中国のアルミ製品輸出量は2023年に約530万トンに達したが、このうち「アルミ板帯や箔、管など13%の輸出税還付の対象製品は520万トン程度だったとみられている」(商社筋)。日本市場に対しては約12万トンのアルミ圧延品(板押出箔合計)が輸出された。中国製アルミ圧延品は、日本以外にも欧米や距離の近い東南アジアなどに出回っており、特に東南アジアでは現地に進出している日系圧延メーカーが、安値の中国製品と競争するケースが多発。シェアを奪われる製品も散見されていた。 不平等な商環境を生んでいた輸出税還付の廃止により、海外市場における中国製品の価格に変化が見られ始めている。中国の河南明泰アルミ業は貿易戦略について「海外向け製品はハイエンド品が中心で価格に関わらず当社材が求められる。既存注文や契約履行には影響が出ない」と自信を示しながらも「還付廃止の影響を最小限にとどめるため、製品加工賃の改定協議に入っている」とした。またアルミ箔を手掛ける洛陽龍県アルミ業も海外顧客の役割が13%の値上げに同意したことを明らかにしている。あまたある中国メーカーで価格改定を公表している企業はまだ少数だが、従来通りの価格設定は困難なもようだ。 中国メーカーが価格改定に動き始める中、日本市場に対するインパクトは現時点ではどう動くか不透明だ。「中国の景気減速であふれ出る可能性も懸念もあるが、税還付廃止で安値材が入ってこなくなることも考えらえれる」(メーカー筋)というのが足元の状況。しかし中国製品に価格上昇圧力が強まれば、日系メーカーの出番が増える可能性はある。 一方で海外マーケットでは水面下で動きが出始めている。UACJの田中信二社長は「中国製缶材の輸出先となっている東南アジアではタイ拠点に対して問い合わせが来ている」と説明。さらに「欧州でも中国製缶材の値上げ交渉が始まっているようだ。これから日本材が求められる可能性がある」と述べた。輸出税還付の廃止からまだ日が浅いため不透明感はありながらも、平等な商取引の実現に期待する声は多い。