「障害者が子どもをもつのは親のエゴ」その言葉に傷つき、それでも、選んだママになること。だれもが平等で、いろんな生き方の選択肢がある【体験談】
自分を嫌いになってしまい、泣いてばかりだった妊娠初期
脳性まひの影響で手や足の不随意運動がある絵里菜さんは、それを抑えるために普段から筋弛緩剤と入眠剤などの薬を服用しています。妊娠初期には、赤ちゃんへの影響を考えてこれらの薬の服用を中止する必要がありました。しかしそのために、心身ともにつらい状況に。 「妊娠初期に薬の服用をやめたので、自分の身体を制御できなくなりました。水を飲む、ごはんを食べる、歯磨きをするなど、今まで自分でできていたちょっとしたことがすべてできなくなり、ヘルパーさんの全介助が必要になりました。『なんで自分はこんな障害があるのか』と自分を嫌いになってしまって、今振り返れば、このときは今までの人生でいちばんつらかったかもしれません」(絵里菜さん) 絵里菜さんは、妊娠する前は「赤ちゃんを産める、そして赤ちゃんを育てられる」と考えていたはずが、体の制御ができなくなったことで「こんな自分が子どもを育てられるのか?」とも考えてしまうようになりました。 「妊娠初期に、TikTokで脳性まひの女性が子どもを産む権利を主張している動画を見ました。そこで、見なければいいのについコメント欄を見てしまったんです。『脳性まひの人が子どもを産むなんて…』とか、『子どもは親を選ぶことはできない』とか、『親のエゴだ』とか…いろんなネガティブなコメントを目にしてしまいました。自分自身の心が不安定だったところに、そんなコメントを見て影響されてしまって。買い物に出かけた先ですれ違う人や、いつも介助をしてくれるヘルパーさん、みんなが自分を『親になるべきじゃない』と思っているんじゃないか、と被害妄想にとりつかれ、いつも泣いていました」(絵里菜さん) そんな苦しい思いを抱えながらもなんとか赤ちゃんと自分とを守り、妊娠5カ月ごろからは筋弛緩剤と入眠剤の服用が再開となりました。絵里菜さんが初めての胎動を感じたのもそのころでした。 「不安が続いてはいたけれど、妊娠5カ月ごろから少しずつ気持ちが落ち着いてきたかもしれません。初めての胎動は、夫と2人でベッドで横になっているときに、胃が動くような感じで気がつきました。『これが胎動か!』とうれしかったです。筋弛緩剤を飲んでいるから赤ちゃんは動かないのかな? と思っていたけど、夜になったらおなかを蹴っ飛ばしてくるし、パンチしてくるしで、とっても活発な子のようでした。元気に生きていてくれることに幸せを感じました」(絵里菜さん)