帰ってきた軽二輪レトロ! カワサキ新型「W230」「メグロS1」試乗インプレ
開発者によれば、低速のトコトコ感と高回転の元気の良さの両立を狙ったのは新しいメグロS1の存在が大きかったようだ。かつての250ccメグロ(メグロジュニアなど)は当時立派なスポーツバイクであり、メグロの外観イメージを投影したエストレヤはトコトコ感を強調していたことからその点で少し異質な存在だったという。 往年のメグロのイメージを引き出すには元気の良さ、そしてエストレヤ的なものを期待するファンにはトコトコ感という、2つの要素を両立するのが命題だったというのだ。 その狙いはきっちり達成されていると思っていいだろう。流して走るときの心地よさとブン回したときの気持ちよさが無理なく同居していた。
“1800rpm”の優しさ
ところで、エンジン始動直後にアイドリング回転が高めだなぁと思っていたわけだが、きっちり暖まってもけっこう高めなままだった。聞けばアイドリングは1800rpmに設定してあるといい、最近のマシンは通常1300~1500rpmあたりであることを考えると明らかに高い。 といいつつ、じつはこれがW230&メグロS1の扱いやすさの要になっていた。 印象的なほど粘り強い低回転トルクは、1800rpmに設定されたアイドリングによって成立しているとも言え、故意にクラッチを乱暴に繋ぎでもしない限り本当にエンジンストールの心配がない。1速&アイドリングでも緩やかな坂道を止まらずに登っていけるほどで、それでも軽やかなサウンドとバランサー内蔵による低振動で不快感は全くないから驚きだ。 とはいえ意図せず前に進んでしまうほどではないので、かなり絶妙なところを突いた設定なのだろう。 また、1800rpmというアイドリング回転にはスロットルの閉じっぱなでエンジンブレーキが穏やかにかかり始めるというメリットもある。いくらスロットルを開けるのが気持ちよくても、エンジンブレーキのかかり始めの躾が悪いとグッドフィーリングが台無しになりかねないものだが、ここも本当に絶妙なところを突いていると思う。 ちなみにエンジンサウンドはというと、外から他人が走っているのを聞くと弾け感のある排気音が聞こえるが、乗っていると吸気音やエンジンノイズと合わさって丸みのあるサウンドに包まれるような感覚に。もう少し排気音そのものが聞こえるほうが嬉しいように思うが、それはメグロジュニアS8の音質を解析・再現したというストレート構造(!)のマフラーが奏でる音があまりにも好みだったからである。 ──もっとも気持ちいい回転域は4500rpm前後に設定したといい、これはKLX230シリーズよりも1000rpm程度低いのだとか。実際、4000~5000rpmでは振動も収束する感じでなんとも滑らかなフィーリングだった。 ──キャブトンスタイル(カワサキはピーシューターと表現)のマフラーは、往年のメグロジュニアS8の音質を参考にしながら、こだわりのストレート構造はS2を手本にしたという。パンチングの数や密度、管の内部に設けられた7穴のプレートなどによって気持ちのいい抜け感ある音質を作り上げた。 ──こちらはカワサキ社内に現存していたというS2のサイレンサーのカットモデル。音質を参考にしたというS8はオーナー所有車を拝借したのだとか。