気鋭アートコレクターの自宅訪問。日本アート界に対して思うことを聞いた
「WHAT MUSEUM」(東京品川・天王洲)でT2 Collection「Collecting? Connecting?」展でコレクションを披露している高橋隆史さん。ブレインパッドの共同創業者であり、ビッグデータ・AI領域で活躍する一方で、アートコレクターとして日本のアートシーンでその存在感を高めてきた。インタビューの後編は自宅に飾っている作品を巡りながら。 【写真15点】高橋隆史さんの自宅、作品
名和晃平、松山智一etc. プライベートミュージアム級の自邸
東京から1時間ほどの場所に広い敷地を持つ邸宅。それがアートコレクター高橋隆史さんのご自宅だった。 「ここが完成し転居してから丸2年と半年が経ちました。子供の教育の関係で移住を決めて、土地を購入したのが2019年。アートを購入するようになった時期でもあり、アートを展示することを前提に家の設計・建設を進めることができました。 直後にコロナが来て、リモートワークが可能になったことで周辺の地価はかなり上がってしまったので、アートを飾る余裕のあるスペースの確保という意味では、ギリギリのタイミングだった訳で、幸運でした」 ――展覧会の話になりますけど、今回、自分のコレクションをあらためて振り返ってみて気づいたこと、感じたことはありますか? 「都度、おもしろいと感じたものを買っているだけなんです。自分のなかには、作品同士をつなげる意図はあまりなくて。一点一点、出合いに応じて買っていったというのが嘘偽らざるところです。ただ今回、いろんな人に観てもらって、コンセプトがはっきりした作品が多いですね、などのフィードバックをもらったことで、自分自身のコレクションにある種の一貫性があったり、通底する価値観だったり、美意識があるんだなと気づけました。 自宅以外でちゃんと飾ったのが初めてなので、そういう意味では、WHAT MUSEUMであれだけ大きい作品を一度に並べて見られて、私自身、単純に楽しかったです(笑)」 ――作品を購入するにあたって、アーティストと会話して決めることが多いのでしょうか。 「そうですね。WHAT MUSEUMで展示していますけど、小林正人さんの作品は彼がベルギーのゲントにいたときに制作したものがコロナ中に輸送されて、ギャラリーの倉庫で飾られていたんですが、プライベートビューイングの案内が来たので見に行ってみたんです。そしたら小林さんご本人も来てくれて、直接、説明をしてくれました。小林さんってTHEアーティストというか、日本人が抱くいわゆる『アーティスト』のイメージを地で行くような非常に存在感のある方なんですが、その彼が滔々と語ってくれて。最初から素晴らしい作品だとは思ったのですが、何しろ大きいので一旦は踏みとどまったんです。でも、作品の鑑賞後に食事もご一緒して更にいろいろとお話を聞くうちに、やっぱり欲しくなっちゃって(笑)。で、結局買ってしまいました。 話せるなら、作家本人と話したほうがおもしろいですよね。なんで、どういう考えで作品をつくっているのかとか、もちろん全ては言語化されないんですけど、それでも伝わってくるものがあるんです。アートフェアとか、個展でも、人気作家だと作家がいないオープニングでどんどん売れていっちゃったりして、急かされるみたいでどうかなって個人的には思っています。本当はゆっくり納得して選びたいので」