爪が黄色くなるだけじゃない…「黄色爪症候群」になりやすい人の特徴とは?医師が解説
「黄色爪症候群」とは爪だけに出る症状ではありません。それはどのような病気で、どんな人が発症しすいのか、医師が解説します。 〈写真で見る〉皮膚がんによるほくろと、そうではないほくろ。何がどう違う?注意したいほくろの特徴とは ■「黄色爪症候群」とは、どのような病気なのか? 「黄色爪症候群」とは、黄色爪、リンパ浮腫、呼吸器病変(胸水など)の3徴候を呈する稀な症候群です。 病期の初期には3つの徴候が全て揃うことは少ないといわれています。 爪は黄緑調で肥厚して巻爪様になり、爪の発育遅延が目立ち、爪甲剥離症になることも多く、リンパ浮腫は比較的中等症で特に下肢の部位に認められます。また、胸水は約50%が両側性に生じます。 通常は、胸水の精密検査を実施すると、リンパ球優位の滲出液であり、胸水貯留が一度生じると、繰り返して再発する傾向があります。 成長速度の遅い(0.2mm/週以下)黄色爪、慢性呼吸器疾患、特に下肢におけるリンパ浮腫の3徴候を認めた場合には、黄色爪症候群と定義されます。 この3つのサインがそろうのは黄色爪症候群の半数程度であるといわれています。 特徴的な症状は数か月から数年にかけて出現することもありますし、黄色爪は出現と消退を繰り返す場合があります。 黄色爪症候群の診断としては、成長速度の遅延した黄色爪(爪甲全体が黄色ないし黄褐色、緑黄色)、下肢のリンパ浮腫、肺病変があれば基本的には確定します。 「黄色爪症候群」の約40%の症例に気管支拡張症を伴います。 それ以外にも、慢性副鼻腔炎や慢性咳嗽、心嚢液貯留、乳糜性腹水、甲状腺疾患、低γ(ガンマ)グロブリン血症、ネフローゼ症候群、再発性丹毒などを合併することもあります。 「黄色爪症候群」に対する、確立された治療はなく、胸腔穿刺をしても胸水貯留が再発を繰り返す場合は、胸膜固定術や胸腔腹腔シャント術が実施されることがあります。 ■「黄色爪症候群」になりやすい人の特徴 「黄色爪症候群」の発症原因は、現在のところ詳細不明ですが、リンパ管低形成によるリンパ還流異常が基礎に生じると推測されていて、遺伝子異常は現在認められていません。 特に、関節リウマチ患者において、ブシラミンや金製剤の使用で「黄色爪症候群」が生じることがあります。 いまだに黄色爪症候群の病態機序は不明ですが、先天性のリンパ管形成不全による還流障害、抗リウマチ薬による薬剤性などの関与も知られています。 また、副鼻腔炎や気管支拡張症など上下気道や呼吸器領域における慢性炎症を抱えている人は、黄色爪症候群を発症しやすいと予測されています。 ■まとめ 黄色爪症候群とは、爪の発育遅延など爪の変化にくわえて、下肢などのむくみや、場合によっては胸水も生じることがあります。 特に、爪組織は肥厚して分厚くなる傾向があり、爪の直下の皮膚である爪床部とは離れているために、爪甲が脱落しやすく、爪甲はやや丸みを帯びた感じになっています。 発症原因は、明確には判明していませんが、身体のリンパ系のトラブルが原因ではないかと考えられているとともに、慢性の副鼻腔炎や慢性の気管支炎、気管支拡張症、膠原病、腫瘍随伴症候群といった病気との関連性も指摘されています。 心配な症状があれば、病気の発見が遅れてしまうことのないように、早めに皮膚科など専門医療機関を受診するなどの行動を心がけることが重要です。 文/甲斐沼孟(医師)
甲斐沼 孟