能登半島地震で被災 輪島塗作家・小西紋野「一回しかない人生。蒔絵にかけたい」避難生活で復興に取り組む今を追う
つややかな漆に金銀などで優美な絵を描く蒔絵。蒔絵アーティストの小西紋野さんはその魅力に惹かれ、輪島での修行を決心しました。能登半島地震で被災し現在は県外で避難生活を送る小西さんに、蒔絵の道に進む決心をするまでと輪島での日々、またこれからへの想いについて伺いました。 【画像】「この美しさが蒔絵なんですね」目が釘づけになる小西さんの作品の数々(全16枚)
■就活中にデパートで運命の出会いが ── 1月の能登半島地震で被災されたこと、心よりお見舞い申し上げます。小西さんは現在、輪島を離れて避難生活を送られていると伺いました。
小西さん:はい、子どもがまだ小さいので、神奈川の私の実家にいっしょに避難しています。夫と義父は輪島に残り、避難所生活を送っています。 ── 神奈川県のご出身である小西さんが、なぜ輪島に行かれることになったのですか? 小西さん:大学3年生で就職活動をしていた時に、たまたまデパートで蒔絵の実演を見かけたんです。蒔絵に使う筆は穂先がとても長く扱いが難しいのですが、その筆で絵皿に絵を即興で描いていく筆さばきに「どうしてこんな長い筆でのびやかに描けるんだろう」と目が釘付けになりました。それが蒔絵との最初の出会いでした。
その時、実演をされていたのは会津の方で、工房に伺っていろいろ教えていただいているうちに、「本格的に蒔絵を習ってみたい」という気持ちが大きくなっていきました。探してみたところ、輪島に塗り物について一貫して教えてもらえるところがあるということで、輪島の漆芸技術研究所に行くことになりました。 ── 普通に就職活動をされていたのが、大きな方向転換ですね!大学ではまったく違う分野を専攻されていたんですよね?
小西さん:大学では政治を専攻していました。でも大学3年生になって、いちおう就職活動をしていたのですが、すごく切羽詰まった気持ちになって。「本当に就職するんだろうか」と自問自答していた時に、デパートで蒔絵の実演を見て、「一回しかない人生。これにかけたい」と思いました。 それまで伝統工芸のことはあまり知らなかったですし、漆に触れたこともありませんでした。何もわからない状態で飛び込みました。 ── ご家族はびっくりされたでしょうね。