子どもの「スマホ依存」、どう向き合うべきか? 取り上げる事が「解決」ではない場合も
保護者には認識しにくい、子どもたちの相談相手
意外に感じる人も多いかもしれないが、経済的に苦しいことが推測される家庭でも、小学校の高学年ごろになればスマホを子どもに所持させているケースは多い。小・中学生と関わる当塾でも、子どものスマホ利用に関する相談や愚痴が多くの保護者から寄せられる。中でも親子の関係が修復不可能な状態にまで至ることもあるのは「ゲーム時間」に関するものだ。
大人に拡がる暇つぶしの延長にあるスマホ依存と同様の理解レベルで子どもを叱ると、子どもが過剰な拒否反応を示す場合も少なくない。理由は、スマホを取り上げられることで相談相手(友達)を奪われるような感覚に陥るからだ。SNSを禁止すれば済むと考えている大多数の大人はその構図を理解していない。 と言うのも、今やオンラインゲームはユーザーが望む場合、他人とチャットを通じた情報交換までできる、「出会い系交流ツール」という側面があるからだ。一般的なSNSを禁じていようがいまいが、現代の子どもたちは巧みに他人とコミュニケーションを続けている。 そして相手がたとえ匿名であったとしても、学校の同級生よりゲームと言う趣味を共有している分、親近感を抱きやすい。保護者には話しにくいプライベートな内容を相談しているケースも少なくない。 だからこそ、である。親が子どものゲーム時間を気にしているのであれば安易にスマホを取り上げたり制限をかけたりする前に、子どもたちの居場所や相談相手を奪う可能性があることを理解した上で「保護者自身が」まず現実を受け入れ、スマホにインストールされているアプリの通信や情報交換の機能について学ぶべきなのだ。
現実から逃れる「居場所」
前回の記事(※関連記事:学習塾の自粛で“居場所”失う子たち)で私は自らのDV経験を含む生い立ちについて書かせていただいた。家庭に事情を抱えている子どもは、保護者の想像以上に親への気遣いをしている場合が多く、気疲れを強いられている可能性があると考えている。 例えばDV家庭で言えば、子ども心にも家庭に関する他人への相談は「親が警察に連れて行かれてしまうのではないか?」と言う恐怖がある。さらに、親がDVの事実を隠そうとしていれば、距離が近い友達や大人に対してはかえって心を開きにくいマインドを醸成しやすくなっていく。相談相手のいない子どもはどんどん追い詰められ、家の外に居場所を求める子どもの一部はグレてしまうのだ。 たとえ束の間の仮想空間とは言え、見たくも聞きたくもない現実の苦しみから逃れることのできる、オンラインゲームというコミュニティ空間。大人にとっては「たかがゲーム」、そして「怪しい匿名人の集う、子どもに関わらせたくない空間」かもしれないが、子どもにとっては自分を子ども扱いせずに悩みを聞いてくれる相談相手がいる場所かもしれない。問答無用に全ての通信環境を取り上げてしまうのは親子間に溝を作るだけである。決してオススメできる方法ではない。 この事実に気付いたきっかけは、去年のこと。「中2の息子がスマホ中毒になった」と悩む母親からの相談を受け、三者面談の中でゲームを止めるよう私が彼に説得を試みた時のことだった。 「お世話になっている人が(オンラインゲームに)いて……あ、いや、なんでもないです」 受験までの時間と言う現実を見せつけ、ゲームを止められない理由を訊ねた私に対し、彼は途中で言葉を飲み込んでしまったのである。内心私が「しまった!」と感じたのは、言うまでもない。