「干されてもいい」腹くくった鬼越トマホーク──容赦ない毒、実は事前に事務所確認も
笑いのルールを共有している先輩芸人に噛み付くのはローリスクだが、最近は俳優や文化人など芸人以外への「毒吐き」を求められることもある。そういうときには、相手方に前もってネタを確認してもらうこともある。荒々しい喧嘩芸の下準備は意外と細かい。 「最初は打ち合わせで決めたことと違うことを言ったりもしていたんですけど、それだと結局カットされちゃうんで、出てる意味ないな、と思って」(坂井) 「今はスタッフさんを通じて先方の事務所に連絡してもらって、ギリギリのラインを行かせてもらうようにしてますね。俳優さんや女優さんの場合、本人たちは『大好きだから何でも言ってください!』って言ってくれることが多いんですけど、事務所からNGが出てしまうこともあります。まあ、それはしょうがないです」(金ちゃん) 喧嘩芸を続けていると意外な反響もあった。一般企業の忘年会やパーティーに呼ばれるようになったのだ。そこでは、社員の気持ちを代弁して社長などの重役に毒を吐く芸で拍手喝采を浴びている。
「めちゃくちゃウケますよ。『お前、会社の金でガールズバー行ってんじゃねえ』とか」(坂井) 「普段偉そうにしてる社長がそういうことを言われているのが面白いんでしょうね」(金ちゃん) 「社員さんからネタをもらっているんですけど、センスのいい言葉を俺らに教えてくれる会社って、だいたい業績がいいんですよ」(坂井) 「社員同士の仲がいいから、悪口も自由に言い合える雰囲気があるんです」(金ちゃん)
喧嘩芸の意外な効能
上下関係をものともしない彼らの喧嘩芸は、サラリーマンが普段は言えない本音を上司にぶつける格好の手段である。見た目は「反社」そのものの2人が行う過激な毒舌芸は、意外にも世の中の風通しを良くする社会貢献になっているのだ。 喧嘩芸がメジャーになればなるほど、ターゲットになる人間の地位もどんどん上がっていく。彼らの野望はまだまだ先にある。 「せっかく華やかな世界に入って運良く10年もやって来られたので、みんなが言いたいことをもっと上の人に言っていきたいですね」(坂井) 「一番上は安倍(首相)とトランプ(大統領)です」(金ちゃん) 「桜を見る会で喧嘩して、止めてきた安倍首相に一発言いたいです。国民の声ですよ」(坂井)