1ストップ戦略は奇策すぎた? 完遂ラッセルはトップチェッカー……なぜ他のトップチームは真似なかったのか?
F1ベルギーGP決勝では、1ストップ戦略を採ったメルセデスのジョージ・ラッセルがトップチェッカー。結果的に失格処分となったものの、ギャンブルを成功させた。ではなぜ他のトップドライバーたちは、ラッセル同様の戦略を採らなかったのだろうか? 【リザルト】トップ10で1ストップ完遂は2名のみ! 2024 ベルギーGP決勝 ベルギーGPの直後、ラッセルを抜けず後塵を拝したチームメイトのハミルトンは、なぜ自身は2ストップ戦略になったのかと疑問を呈していた。 ラッセルが1ストップ戦略を採ったことで窮地に立たされたのはハミルトンだけではなく、トップ10で同様の戦略を採ったのはアストンマーティンのフェルナンド・アロンソだけだった。 ベルギーGPは、メルセデスが調子を上げてワンツー態勢を築き、マクラーレン対レッドブルのマックス・フェルスタッペンという優勝争いの再現はならなかった。予想不可能なF1の真骨頂とも言えた。 レースはF1パドック関係者の予想とは全く異なる展開となった。舞台となったスパ・フランコルシャンの路面は部分的に再舗装を受け、例年よりも激しいタイヤのデグラデーション(性能劣化)が予想された。そのため、理想的な戦略はミディアムとハードコンパウンドを使う2ストップ戦略に絞られた。 そしてスパは他のサーキットに比べて比較的オーバーテイクが容易だ。つまり各チームともピットストップのタイミングでアンダーカットを許したとしても、フレッシュタイヤを履いた状態であればコース上で追い抜けると考えていたのだ。 しかし土曜日の雨でドライコンディションでの走行機会が減ったことで、F1チームもタイヤメーカーのピレリもハードタイヤの摩耗具合が未知数という状況だった。そしてピレリの予想では“除外”されていた1ストップ戦略の線が突如復活したのだ。 チーム間のわずかなギャップ、ケメルストレートのDRSゾーン短縮、そして悪化の一途を辿るダーティーエアの影響に加え、デグラデーションが最小限に抑えられたことで、オーバーテイクは非常に難しくなり、トラックポジションを維持することが予想以上に重要となった。 レース終盤、ハミルトンはフレッシュなタイヤでラッセルをパスすることができず、このトップ2台に対してマクラーレンのオスカー・ピアストリもすぐに追いついたが、メルセデス勢の後ろで詰まってしまった。 またピアストリのチームメイトであるランド・ノリスはハードタイヤを履き、耐久性に劣るミディアムタイヤを履いたフェルスタッペンよりもペースが良かったものの、オーバーテイクには至らず5位争いに敗れた。 ピアストリがレースエンジニアに語ったように“クリーンエアー様様”なら、なぜピアストリ含め他のトップドライバーはラッセル同様の戦略を採らなかったのだろうか? 「もちろん、我々も検討した」 そう語るのはマクラーレンのアンドレア・ステラ代表だ。 「我々はこれが上手くいくと固く信じていた訳ではなかった」 「我々にとっては、あれはかなり極端なことだった。これにコミットして上手くいかなかった場合、決勝日を台無しにしてしまう可能性があるからね。ピットに入るには手遅れで大きくポジションを落としてしまう可能性があるから、非常に痛いことになりかねない」 ステラ代表は、コンストラクターズタイトルをレッドブルと戦うマクラーレンがリスクを避ける傾向にあると認めた上で、5位フィニッシュが妥当だと思われていたラッセルが失うモノは少なかったと示唆した。 「ラッセルのポジションでは、リスクのあるアプローチを取るモチベーションが高かったかもしれないが、我々はもう少し堅実に考えたい」とステラ代表は言う。 「冒険的な戦略には少し慎重になる必要がある。我々はレッドブルよりもまた多くのポイントを獲得した。でもまだポイントで後れを取っている」 「ランドの戦略も強固だったし、オーバーテイクできなかったことには少し驚いた。フェルスタッペンは最終スティントでミディアムを長持ちさせていた。それができたドライバーは多くない」