シリア・アサド政権は崩壊間近…ウクライナの泥沼にハマったプーチンが迫られる「究極の選択」と、その後に襲う「深刻な打撃」
アサド政権の基盤、弱体化
ここで、シリア内戦の主だった勢力を3つに整理しておこう。 まずはアサド政権側のシリア政府軍だ。シリア政府軍は、ロシア、イランに加え、イランから支援を受けているレバノンのヒズボラなどによって支えられてきた。 次にロジャヴァとも呼ばれるクルド人勢力だ。ロジャヴァというのは、「北部及び東部シリア自治行政区」の略称だが、シリア政府から公式に自治権を認められているわけではない。クルド人勢力が強い、主としてシリア北東部を中心に支配領域を広げ、その中で勝手に独立国のように振る舞っている勢力だ。 もう一つが反政府勢力とひとまとめでよくいわれる雑多な勢力だ。こうした勢力は目的が共通しているときには団結するが、いろんな思惑で離れていくこともあり、本質的には統一的に捉えることはできない。なお現在の反政府勢力の主力はHTS(タハリール・アル・シャーム機構)という、かつてはヌスラ戦線とも呼ばれたテロ組織だ。 アメリカは反アサドの立場から、クルド人勢力や反政府勢力を支援してきた。トルコは、アサド政権とも仲は良くないし、クルド人勢力が強くなると、トルコ国内のクルド人勢力にも大きな影響を及ぼすため、反政府勢力、特にHTSを強力に支援する立場に立っている。 アサド政権はその政権基盤を、ロシアばかりでなく、レバノンの武装組織であるヒズボラの支援にも頼ってきた。ところが、ヒズボラはこの間のイスラエルとの戦闘で徹底的に弱体化された。ヒズボラを支える立場にあったイランも、イスラエルと戦える力が自分たちにないことを悟り、イスラエルの強い動きに対して、結局手が出せない状態になっている。 こうなると、アサド政権の支持基盤が極めて弱体化していることが容易にわかるだろう。こうした力学的な変化も、今回の反政府勢力の動きに大きな影響を及ぼしている。
ウクライナも捨てられない、シリアも捨てられない
今回の事態を受けて、プーチンは極めて困難な状況に陥った。 ウクライナとの戦いを優先すれば、シリア援助を切り捨てるしかなくなる。しかしシリア援助を切り捨てれば、中東においてのロシアのプレゼンスを失うことになり、ロシアの国際的な発言力を失わせることに繋がる。シリアに親欧米政権が樹立され、中東の産油国・産ガス国とヨーロッパ諸国を結ぶパイプラインが建設されることになれば、ロシアの経済的な打撃は計り知れないことにもなる。だからシリアを失うことは絶対に避けなければならない。 しかし今アサド政権を守るには、相当な兵力をウクライナからシリアに動かさなければならない。そんなことをすれば、ウクライナが一気に反転攻勢に出てくることは容易に想像ができる。 ロシアはウクライナも捨てられない、シリアも捨てられない中で、究極の二択を今迫られているのだ。 ところで今回の動きは、トランプ政権誕生とつながる動きではないかとの説もある。 トランプはウクライナの戦争を終わらせることを最優先させると明言している。そのやり方はまだ明確にはわからないけれども、 1)ウクライナのNATO加盟を20年間は認めない 2)ウクライナにアメリカは制限なく武器を売却できるようにし、これによってロシアに対するウクライナの抑止力が確保できるようにする 3)800マイルの非武装地帯を設置し、停戦監視団は、ポーランドやドイツ、イギリス、フランスなどヨーロッパ諸国が担う(アメリカは停戦監視団に入らない) というものではないかと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じた。 このような停戦案はプーチンにはとても飲めるものではないだろうが、そのプーチンに対して停戦案を飲めとするトランプ側の圧力が、トルコを通じてすでに行われているのではないかという見方も出ているのだ。 この真偽はわからないが、トルコのエルドアン大統領がトランプの言うことを素直に聞いているとは考えにくい。私はむしろ、トルコが自らの国益を考えて積極的に動いていると見るほうが正しいのではないかと思う。 ちなみにトルコは単にHTSを支援するだけでなく、シリア領内にトルコ軍を介入させているとの話も出ている。
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