シリア・アサド政権は崩壊間近…ウクライナの泥沼にハマったプーチンが迫られる「究極の選択」と、その後に襲う「深刻な打撃」
ロシアの国益としてのアサド政権
ところでシリアはロシアにとって死活的に重要な戦略的な要衝である。 シリアの南東側にはイラク、クウェート、サウジアラビア、カタールなどの石油・天然ガスの重要な産出国がある。そしてシリアより北西側にはトルコがあり、さらにその西側にはヨーロッパ諸国が広がっている。 仮に南東側の石油・天然ガスの重要な産出国と、北西側のヨーロッパ諸国を結ぶパイプラインが建設されると、中東の石油・天然ガスが極めて安価にヨーロッパに供給されることになり、そうなると自国の石油・天然ガスを売りたいロシアとしては、たいへん困ることになる。 だから、シリアを反欧米にしておいて、南東側と北西側がパイプラインで繋がらないようにすることが、戦略的に極めて重要だったのだ。 だから何があっても反欧米のシリアのアサド政権を守るのは、ロシアの国益に極めて重要であった。 さらに言えば、前回のトランプ政権期にイスラエルとサウジアラビアが歴史的和解をしたことも、ロシアには大きな脅威であった。シリアを経由しないでも海底パイプラインを地中海に通せば、トルコやギリシャなどに南東側の国々の石油や天然ガスが送れるようになってしまうことになる。これもまた、ロシアにとっては大変困ることになる。 このイスラエルとサウジアラビアの歴史的和解に対して、大きな邪魔をしたのがバイデン政権だったことも思い出したい。 サウジアラビアのサルマン皇太子の命令でサウジアラビアの反体制派のカショジ記者がトルコにあるサウジアラビア大使館で殺害されたのではないかとの疑惑をバイデン大統領は持ち出して、アメリカとサウジアラビアの関係を悪化させ、サウジアラビアとイスラエルの関係も冷え込ませる働きをした。バイデン大統領の意図がどんなものであったにせよ、客観的にはロシア、イラン、中国を大いに利する動きであったと言わざるをえない。
ウクライナの泥沼に足を取られた結果
話がやや脱線したが、ロシアはこの状況を前にして、どのような対応を取るだろうか。 ここで頭においておくべきは、ロシアがウクライナとの戦争に全力を注がなくてはならなくなっているところだ。ウクライナとの戦争でロシア側は確かに占領地を確実に拡大している。だが、それはロシア側が自らの犠牲を顧みない無謀な攻撃を続けているからで、ロシア側の損耗はウクライナ側の損耗を実は遥かに凌駕している。 人的損失が激しいために、ロシアは北朝鮮軍やイエメンのフーシ派の軍勢もかき集めてウクライナとの戦闘を何とか行っている状態であり、シリアに十分な兵力を割くことはできなくなっている。シリアに展開されているロシア軍も必然的に規模縮小に追い込まれているのだ。 アサド政権を支援するロシアは、反政府勢力の拠点などに空爆を行い、アレッポなどで320人以上が死亡したと報じられてはいる。だが、主要都市アレッポがほぼ一日で陥落したのは、ロシア側の支援が限定的なものにとどまっていることを、如実に物語っているだろう。 シリア政府軍は必死の抵抗をしても、十分な援軍が来ないことを想定しなければならないので、本来は絶対に死守しなければならないはずの主要都市であるアレッポであっても、あっさりと見限ったと見るべきなのだ。
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