薄型ウォッチのパイオニア、ピアジェの技術とエレガンスを知る3本
ピアジェは、1874年にスイス時計製造の中心であるジュラ山脈、ヌーシャテル湖の西端に位置するラ・コート・オ・フェの時計工房として始まった。創業者ジョルジュ=エドワール・ピアジェが手掛けるムーブメントは高く評価され、名だたる高級時計ブランドの重要なサプライヤーになる。1943年にピアジェの名をブランド名に掲げ、現在に至るまで誕生の地を離れず時計をつくり続ける名門マニュファクチュールだ。 【画像】現代アートな新作「アンディ・ウォーホル ウォッチ」 薄型時計のパイオニアであり、50年代以降ムーブメントの最薄記録を次々と打ち立てる。そして、それは伝統的な機械式にとどまらなかった。70年代のクオーツ台頭時には保守的なスイス時計産業でむしろ積極的にクオーツの開発に取り組み、薄さを追求。76年に3.1㎜という当時世界最薄のクオーツムーブメント「7P」を発表したのである。 薄さを極めることはけっして記録の追求だけではない。薄くすることで時計のデザインやジュエリーセッティングといった装飾の自由度は増す。いわば創造の可能性への挑戦だったのだ。こうして生まれたジュエリーウォッチはもとより、培った審美眼や技法を注ぐハイジュエラーとしても世界中の女性を魅了する。一見相反しながらも両者は見事に融合し、類い稀なクラフツマンシップが通底するのだ。
新作「アンディ・ウォーホル ウォッチ」
エッジィなスタイルに時代を映す現代アート 「アンディ・ウォーホルについて知りたいと思ったら、映画や絵をただ表面的に見てくれればいい。そこに僕はいるから。裏にはなにもない」とウォーホルは語った。その作品もさることながら、常に衆目を集める生き方やスタイルも作品そのものだった。銀のウィッグをつけ、典型的なアメリカントラッド。首からはチノンのカメラを下げ、ベルルッティの靴を愛用した。時計好きでも知られ、カルティエのタンクは針が止まっていてもアクセサリーとして着けた。 ピアジェもこよなく愛したブランドだった。7本以上を所有し、なかでも有名なのが1972年に誕生したブラックタイウォッチだ。当時最先端だったクオーツムーブメントの「Beta21」を搭載し、45㎜径のクッション型ケースにゴドロン装飾を施したデザインは、まるでSFのタイムトンネルを思わせた。ウォーホルが愛用したことから、やがて「アンディ・ウォーホル ウォッチ」が正式名称に。生産は約10年で終了したが、高い人気から2014年に機械式ムーブメントを搭載し、限定復刻されてきた。 待望の新作はオリジナルを換骨奪胎し、アイコニックなベゼル装飾をクル・ド・パリに変え、ブルーのメテオライト文字盤を採用する。エッジの効いたパンキーなデザインにも現代アートのテイストが漂う。もし本人が生きていたらその腕を飾ったに違いない。