おいしい食べものと人がつなぐ3年間の記録 南青山の人気店『ふーみん』のドキュメンタリー映画が公開
「体調が悪い時に食べたくなる」「大きな鉢なのにペロリと食べられる」とファンが多い「豆腐そば」、ふーみんママが好きだったお店のメニューを自分で再現してアレンジした「ねぎそば」、納豆が食べられない人でもファンが多い「納豆ごはん」「納豆チャーハン」など、『ふーみん』でしか食べられないメニューも数多くあります。そこには、料理が好きなふーみんママと『ふーみん』が好きなお客さんが交わした記録とも言えるような名物メニューばかりです。
(上/最後にさっと火を通すだけ、納豆が生きる「納豆チャーハン」、下/人気メニューの「ねぎワンタン」) 最初にオープンしたのは神宮前のお寿司屋さんの居抜き物件で、その後南平台へと移り、現在お店のある骨董通りへ。お店は、原宿・渋谷・表参道からも近く、たくさんのクリエイターが足を運びました。和田誠さん平野レミさん夫婦、三宅一生さん、絵本作家の五味太郎さん、イラストレーターの灘本唯人さん。『ふーみん』のお店のロゴイラストは五味太郎さん、文字は灘本唯人さんが手掛けています。
ふーみんママが70歳を迎えた2016年、お店の経営を甥に任せ、ふーみんママは『ふーみん』を引退しました。そして2021年、1日1組限定のお店『斉』をオープン、今も変わらずに腕を振るっています。
(上/引退後、台湾を訪れ家庭料理を味わうふーみんママ、下/現在ふーみんママが営む、1日1組限定の中国料理店『斉』) ふーみんママが最後に伝えてくれたのは 「食べることは心を作り、体を作ること。そして生きること」 私たちは、日々どんなふうに食べることに向き合っているでしょうか。忙しくてお昼ごはんも食べられない、疲れ果てて夕ご飯を作りたくない、買って来たもので済ませてしまう。そんな日もあると思いますが、食べることが私たちの体を作り、明日に向かって生きます。
ふーみんママの3年半の記録から伝わって来るのは、なんでもない日常や食べることがいかにみずみずしくかけがえがないのかということです。それによって“生”を享受し、元気になり、またおいしいものが食べたなくなる。また食べるという行為は基本1人で行うことなのに、それを作る人や一緒に食べる人という、ゆるやかな連鎖があることにも気付かされます。自分が今夜作る料理にも、実はそんな物語がある。疲れた日は、外で食べてしまってもいい。今日食べる一皿にもそんな背景があることに気付かされることで、改めて明日生きること、食べることを大事にしたいと思うのかもしれません。 そして映画を見ると、間違いなく『ふーみん』に行きたくなります。ふーみんママが残した味を、ぜひお店やホームページで紹介したレシピで、味わってみてください。