給食で相次ぐ「子どもの窒息事故」はなぜ起きる?歯科医師が教える「身近な食べ物」を使った「お口のトレーニング」
今年2月、福岡県で小学1年生の男子児童が給食のうずらの卵を詰まらせて亡くなる事故が起こりました。文部科学省によると、2021年には小学5年生の男子児童、2015年には小学1年生の女子児童が給食のパンやうずらの卵による窒息事故で亡くなっています。 【写真】なぜ丁寧に歯を磨いても「口臭」は消えないのか?歯科医が教える本当の理由 事故の度に再発防止の対策が取られますが、それでも事故が絶えない理由として、歯科医療界ではこれらの事故には全く異なる原因が関係している可能性を指摘する声が少なくありません。埼玉県志木市の歯科医師であり、朝霞地区歯科医師会志木支部・支部長として口腔機能集団検査を全国に先駆けて行った宮本日出先生が解説します。
子どもが食べ物を詰まらせるのには、こんな原因も?
今年2月に福岡県みやま市の小学校で起こった窒息事故直後には、県内の校長に「しっかり噛む」や「ゆっくり食べる」の通達が出されました。しかし、子どもの事故防止に取り組むNPO法人「Safe Kids Japan」理事長で小児科医の山中龍宏先生は、「これらの指導では窒素事故は防げない」と指摘。前歯の生え替わり時期で食べ物を細かくできずに丸飲みする可能性があり、そもそも小学1年生にはうずらの卵の給食は適していない」と苦言を呈しました。 また、以前より日本小児学会も窒息に危険な食品として、うずらの卵やミニトマトなどの丸くてつるっとしたもの、餅やパン類などの粘着生が高く、唾液を吸収して飲み込みづらいもの、りんごや生のにんじんなどの固くて噛み切りにくいものを挙げています。 このため、事故後、嚥下に関する業界やメディアからは、給食にはこれらの食品は小さくして提供するのが望ましいとの意見が聞かれました。その他の原因として、短すぎる給食時間や先生の管理不足、食べる際の児童の姿勢なども取り上げられました。 このように食べ物の状態、食事の環境、歯の状況などが原因として議論されてきましたが、実は歯科医療界では、子どもが食べ物を詰まらせる原因は他にもあると考えています。 それが口の働き(口腔機能)の成長が不十分な状態「口腔機能発達不全症」の影響です。 児童で口腔機能の成長が悪い状態を「口腔機能発達不全症」と言い、2018年に厚生労働省が病名指定をして保険治療の対象とした比較的新しい疾患です。口腔機能とは「食べる(咀嚼)」「飲み込む(嚥下)」「話す(会話)」などの生活に必要な口の基本機能のことを指します。つまり児童の食べ物による窒息事故には「口腔機能発達不全症」という病気が隠れている可能性があるのです。