どちらが勝っても日本に「逆風」か...トランプvsハリス、日本経済にとって「まだマシ」なのは?
金融政策や為替は矛盾だらけ
つまりトランプ氏の目玉政策が実施された場合、貿易の停滞と人手不足、生産性低下が同時発生し、インフレ圧力が高まる可能性が高い。ここで問題となるのが金融政策である。 インフレが進んだ場合、セオリーどおりに考えれば、FRB(米連邦準備理事会)は物価を抑制するため金利の引き上げを実施せざるを得ない。トランプ氏はインフレを退治するとも主張しているので、本来なら利上げを支持するはずであり、そうなった場合にはドル高が進むことになる。 だが、トランプ氏は金融政策や為替について正反対の主張を行っている。 トランプ氏は以前からFRBのジェローム・パウエル議長を激しく罵るなどFRBを敵視しており、自身が大統領に就任した場合、FRBに対して利下げを求めるとしている。 為替政策については、自国通貨安を誘導しているとして日本に矛先を向けており、米製造業を守るためドル安にすると繰り返し主張してきた。 目玉政策を実施すればインフレが加速することになり、インフレを退治するためには利上げが必須だが、トランプ氏は利上げを否定している。そうなるとさらにインフレが加速し、トランプ氏の主張とは正反対に物価高が止まらなくなる可能性が高い。 一部の論者はトランプ氏がアメリカ国内での石油・天然ガスの採掘を強力に推進すると主張していることから、エネルギー価格の下落を通じてインフレを抑制できると主張している。 確かに石油や天然ガスの供給増はインフレ抑制効果をもたらすかもしれないが、アメリカのシェールガス、シェールオイルの採掘コストは高く、現在の原油価格水準では、各社が生産量を大幅に拡大するインセンティブは働きにくい。 従ってエネルギー供給の増大だけで現在のインフレを克服するのは困難と考えたほうがよい。日本国内では、アメリカの原油増産によってエネルギー価格が下がることを望む声も出ているが、過度な期待は禁物といえよう。 トランプ氏が大統領に就任した場合、程度の問題はともかくとして、関税と移民政策については実行に移す可能性が高く、インフレを防ぐためFRBは金利を上げるというシナリオが濃厚である。 トランプ氏は激しくFRBを批判するだろうが、アメリカの中央銀行制度は独立性が高く、大統領の意向であっても簡単には受け入れない。FRBが再び利上げに転じれば、円安が再度、進むことは十分に考えらえる。 もっとも、今の為替相場はアメリカ側要因ではなく、日本側の要因で動きやすくなっており、最終的にドル円相場がいくらになるのかは、日銀の金融政策次第だ。 一方、トランプ氏は減税も強く主張しているので、インフレと相まって株価は上昇しやすい。日本の株式市場はアメリカ市場との連動制が高いことに加え、今はある種の円安バブル相場になっている。 将来の反動は大きいだろうが、トランプ氏が勝った場合、バブル的相場がしばらく継続するだろう。