どちらが勝っても日本に「逆風」か...トランプvsハリス、日本経済にとって「まだマシ」なのは?
関税と移民はブレないトランプ
トランプ氏は、支持者ごとにバラバラの主張を行うことがよくあり、各政策の整合性が取れないケースが多い。このため、実際に大統領に就任した際、どのような政策を繰り出してくるのか予想できない面がある。 だがトランプ氏の発言の中で、関税政策と移民政策の2つについてはほとんどブレがない。 トランプ氏は保護主義を強化する姿勢を鮮明にしており、中国からの輸入に対して関税を60%超にする考えを示している。トランプ氏はかねてから中国を敵視しており、対中関税はトランプ氏が大統領だった時代に実施した政策である。 だが、今回の大統領選では対中関税をさらに強化するだけでなく、日本など友好国に対しても10%の関税をかけると発言するなど、保護主義がより過激になっている。 仮に中国からの輸入に対して60%、日本など友好国からの輸入に対して10%の関税を課した場合、アメリカの輸入物価は確実に上昇する。そうなると、せっかく沈静化の兆しが見えてきたアメリカ経済が再びインフレに悩まされることになるかもしれない。 もっとも、中国からの輸入にさらに高関税をかければ、直接的な輸入が減少することは目に見えている。一方で、同国からの輸入については、関税を回避するため第三国を経由したものが増えるだけであり、実態は大きく変わらないとの見方もある。 実際、アメリカの隣国であるメキシコでは中国企業が相次いで現地法人を設立しており、迂回輸出の準備を進めている。 だが、友好国からの輸入にも関税をかけるとなると、60%の関税は回避できたとしても10%の関税は残ってしまうので、やはり物価には上昇圧力が加わる。 もう1つの目玉政策である移民政策についても、経済的に見れば確実にインフレ要因といえるだろう。アメリカの低賃金労働は、厳密には違法であるものの、既に社会に定着している移民によって成り立っている部分が大きい。 移民の強制退去を進めた場合、低賃金労働に従事する人が減るので、企業は相応の賃上げを余儀なくされる。そうなれば物価上昇にさらに拍車がかかる。 当然のことながら、世界の物価動向はアメリカ経済の影響を強く受けるので、アメリカが再びインフレに転じれば、その流れは日本にも波及する可能性が高い。 ちなみに共和党の副大統領候補であるJ・D・バンス氏は、グローバル主義の象徴とされる巨大テクノロジー企業の解体を主張している。 過激な政策であり、実現性に疑問符が付くものの、トランプ政権の誕生によってアメリカのテクノロジー産業に逆風が吹けば、生産性の低下を通じて、やはりインフレが発生しやすくなる。