53歳”キングカズ”がJ最年長出場記録更新で躍動…「自分の気合いを示すことで戦う姿勢を見せたかった」
3日の段階で下平隆宏監督が明言していた通りに、遠征メンバー入りを果たした。そして、1日のサンフレッチェ広島との明治安田生命J1リーグ第8節から先発全員が入れ替わったなかで、24歳の草野侑己との2トップで敵地のピッチに立つと決まった瞬間から、喜びと責任を胸中に同居させた。 「いまなお新型コロナウイルスの感染が広がり、まだまだ大変な時間を過ごしている人が多いなかで、こうしてお客さんの前でサッカーができる機会をいただいて本当に幸せだと思っていました。そしてチームが連敗しているなかで何とか勝利して、いい方向に行くようにしたい。久しぶりに公式戦に出場する自分には、そうした責任があるのではないか、と思いながらピッチに立ちました」 カズの言葉通りに横浜FCはリーグ戦で4連敗を喫していた。中断期間中にシステムを[4-2-3-1]から[3-5-2]へ変更し、東京五輪世代を中心に若手を積極的に起用。自陣から丁寧にパスを繋ぐスタイルで主導権を握る時間帯はあっても、最終的には点差をつけられるパターンが続いた。 自分たちのやり方だと信じていても結果がついてこなければ、豊富な経験をもつカズをして「一番よくない」と言わしめる、不安や戸惑いがチーム内に生じてくる。直近のリーグ戦でそうした雰囲気を感じていただけに、過密日程のなかでメンバーを総入れ替えしたなかで、下平監督はフォワードとしてのパフォーマンスと同時に、カズが常に放つポジティブなオーラに起爆剤の役割を託した。 「カズさんがメンバーに入ることで、当然、選手たちの士気も上がる。アップしているときから円陣を組むまで、カズさんが入るだけですべての雰囲気を変える影響力がありました」 指揮官から託されたメンタル面での使命を、カズ自身も理解していた。キックオフからわずか10秒あまり。試合後のオンライン会見で「遅れてスライディングが入ってしまい、相手には本当に申し訳なかった」と反省の言葉を漏らした、サガンの右サイドバック・王嘉楠へのファウルが飛び出した。 タッチライン際でパスを受けた王が、横浜FCの選手をかわして前を向いた直後だった。中央付近から猛然とダッシュしてきた、カズのスライディングタックルへ主審が即座に笛を吹いた。 「自分が気負ったというよりも、自分の気合いをみんなに示すことで戦う姿勢を見せたかったので」