2ステージ制で浦和Vの価値半減?
慎重に言葉を選びながら、浦和レッズのFW興梠慎三は偽らざる心境を打ち明けた。 「あまり変なことは言えないですけど、やはり年間優勝したときよりもトロフィーの重さが半減しているというか、喜びも半減しているというか。ルール上は優勝なので、そこは素直に嬉しいかなと」 敵地で行われた20日のヴィッセル神戸戦。引き分け以上で8年ぶりのタイトルとなるファーストステージ優勝が決まる状況で、鹿島アントラーズ時代にリーグ3連覇を経験している興梠はこんな思いを抱きながらベンチで戦況を見つめていた。 「優勝よりも無敗記録を伸ばすことのほうが気になっていました」 状況は1対1。6分間が表示された後半のアディショナルタイムの1分が過ぎたときに、同時進行で戦っていたガンバ大阪が引き分けた。この時点でレッズの優勝が決まったが、ベンチも、そして敵地のゴール裏を赤く染めたサポーターも喜ぶことなく声援を送り続けた。ゴールはまだ先にあるからだ。 興梠が「あまり変なこと」と断りを入れたのは、今月7日の清水エスパルス戦後の一件があるからだろう。自らのゴールで王手をかけたお立ち台で、ヒーローはこんな言葉でスタンドの喝采を浴びた。 「自分は年間優勝を獲りたいので、ファーストとかどうでもいいです」 言葉がやや過激だったゆえに少なからず波紋が生じたわけだが、実際、レッズはファーストステージ優勝を通過点としてとらえている。 終盤の大失速で優勝を逃した昨シーズン。DF槙野智章はこんな言葉を残している。 「これからは仲良し集団じゃダメだ」 嫌われ者になってもいい覚悟で改革を訴えた意図を、槙野はこう明かす。 「選手同士の仲がすごくいいので、こうしていればよかったという『たられば』のコメントがたくさん聞かれたんですね。それならば喧嘩をするわけじゃないですけど、もっとチームをよくするために、お互いに厳しく要求し合うことが必要だと。発言することで、その選手にも責任感が生じる。何かを変えなきゃいけなかったので」 刻一刻と状況が変わるサッカーはベンチの指示を待つことなく、選手の判断によってプレーしなければならない。たとえばヴィッセル戦では、1点リードで迎えた後半30分にMF宇賀神友弥が2度目の警告を受けて退場となった。 まさかの事態に、自然発生的に守備陣が集まって言葉をぶつけ合った。 「ここからが勝負どころだ。ここから自分たちが試される。逆に楽しんでいこう」 同39分に同点とされた後は10人が「我慢」の二文字を叫び合い、残り時間を泥臭くしのぎ切った。 「ベンチに監督はいますけど、ピッチ上で何をしなければいけないのかを、ポジションの近い選手たち同士で瞬時に話し合えるようになった点が、レッズがいい方向へ進んでいる要因だと思う」 メンタル的に自立したと槙野が力を込めれば、キャプテンのMF阿部勇樹は「我慢できるようになった」とこう続ける。 「攻撃でも守備でも、我慢する時間帯は耐えられるようになった」 開幕から16戦連続無敗とJ1記録を更新してきた過程で、相手に先制を許した試合が「6」を数えた。これまでは焦って前掛かりとなり、相手のカウンターの格好の餌食となってきた。 昨シーズンは先制されると2勝2分け4敗と墓穴を掘ってきたが、今シーズンは4勝2分け。総得点34のうち後半に25点をマークするなど、90分間をトータルで考えられる冷静さを身につけた。