なぜ議論しない?野放しにされたままのネット選挙、2025年「選挙イヤー」を前にいますぐ改革を開始すべきだ
■ 斎藤氏を勝たせたのはSNSか? 改めて、このように列挙してまず気がつくのは、「SNS選挙」「SNS vs マスメディア」などとひとまとめにして論じられがちではあるものの、実際それぞれの選挙の構図や詳細、取り上げられ方は相当異なったものであるということだ。 差異を列挙していくとするなら、国政選挙と地方選挙がないまぜになっている。国政選挙と地方選挙は仕組みが相当違う。 当選の可否もそうだ。東京都知事選挙の「本当」の勝者は間違いなく三選した小池百合子氏だ。結局、小池氏は300万票近くの得票で当選した。選挙運動を通じての露出はネットも含めてそれほど多くはなかった。 安野氏や暇空氏こそ政治経験を持たないネット、SNSからの候補といえる。挑戦は貴重だが、票数ということでいえば供託金も戻ってこない水準に留まった。 東京15区補選でも、つきまとい行為などは物議を醸し、選挙の自由妨害が懸念された。公選法の品位規定強化の機運が高まっているが、蓋を開けてみると、選挙妨害が本選挙の勝敗に顕著に影響したとは考えにくい大きな票差で勝敗が決している。 インフルエンサーやオピニオンリーダーから、マスメディアでも有名な乙武洋匡氏も立候補したが、いずれの候補者の得票もほぼ横並びに留まった。 ◎衆院補選 東京15区 2024 | NHK選挙WEB 衆院選では各政党がSNSや動画を活用した。しかしいったいどの尺度、変数で見たとき、ネットが影響したといえるのだろうか。 国民民主党はそもそも少数政党で、選挙に強い現職も少なくない。自民党も、公明党も、立憲民主党も、維新も比例票をそれぞれ違いはあれども大きく減少させている。 兵庫県知事選もイレギュラーなことが多々あった。二元代表制で、成立条件が国政よりも厳しい知事に対する不信任決議案を全会一致で成立させたにもかかわらず、少なくない県議が現職支援に回った。 では、いったいなぜ不信任決議案に賛成したのか? 事実上、維新は独自候補を擁立したにもかかわらず一部議員は斎藤氏を応援したのだからますます筋が通らない。そのおかしさは維新内部でも一部では認識されていて、例えば兵庫維新の会代表は選挙後に役職を辞任している。 投票率は伸びたが、斎藤氏の得票率は前回よりも下がっているし、2位の稲村氏と3位の清水氏の得票を合計すると斎藤氏を上回る。兵庫県知事選過去最多の立候補者の数なども斎藤氏を利した可能性が高い。