CLのドイツ勢対決は、現代のクラシコか?
史上初のドイツ勢同士の対決となったUEFAチャンピオンズリーグ決勝は、日本時間26日午前3時45分にロンドンの聖地ウェンブリー・スタジアムでキックオフを迎える。 12シーズンぶり5度目の優勝を狙うバイエルン・ミュンヘンと、16シーズンぶり2度目の優勝を狙うボルシア・ドルトムント。下馬評では、今シーズンの公式戦において2勝2分けとドルトムントを圧倒しているバイエルンの優勢が伝えられている。ドルトムントのエース、ドイツ代表MFマリオ・ゲッツェが故障で決勝戦を欠場することも大きなマイナス要因となっている。 監督として両チームをともに欧州王者に導き、現在はスイス代表を指揮するオットマー・ヒッツフェルト氏は、バイエルンとドルトムントの対決をバルセロナ対レアル・マドリーに代わる「現代のクラシコ」と位置づけた上で、ドイツサッカー界と、特にバイエルンをこう絶賛している。 「ヨーロッパのクラブレベルにおける覇権交代は完了した。バルセロナとの準決勝2試合でみせたバイエルンの明らかな勝利は、それを象徴するものである。ドイツのチームは、スペインのビッグクラブに勝てるようになった。バルセロナがここ数年間のヨーロッパを支配してきた事実は変わらないが、彼らは疲れてハングリーさを失っている。代わってバイエルンがヨーロッパのナンバーワンに定着しようとしている。ブンデスリーガが積み重ねてきた素晴らしい仕事がいま、実になっている。ドイツサッカーのイメージは確実にアップしている」。 バイエルンが2試合合計7対0でバルセロナを、ドルトムントが同じく4対3でマドリーを下した準決勝は大きな衝撃をヨーロッパサッカー界に与えた。バルセロナとの合意が伝えられているブラジル代表FWネイマールが一時は、バイエルンに移るのでは、という憶測が5月に入って流れたが、スペイン勢やイングランド勢に席巻されていた昨シーズンまでならありえなかったことだ。 ドルトムントが来シーズンの補強の目玉として、ブレーメンで大ブレークを果たしたベルギー代表MFデ・ブルイネの名前を挙げたとたんに、保有権を持つプレミアリーグのチェルシーが「ドルトムントがいい選手と言うのだから、ウチにとってもいい選手のはずだ」と態度をひょう変。放出する方針を見直したとされる報道も、ブンデスリーガのステータスが上がっていることを物語る。 ひと昔前はドイツを目の敵にしていたスペインやイギリスのメディアも、こぞってブンデスリーガを好意的に報じ、自国のリーグよりも上と評価している。 曰く「チーム経営が健全だ、ファンを大切にしている、チケットが比較的安い、練習が公開されている、スタジアムの雰囲気が素晴らしい、笑顔の絶えない選手たちにシンパシーを感じる」と。 もっとも、バイエルン対ドルトムントのドイツ対決が、イコール、ドイツのサッカーの“欧州制覇”とはまだまだ呼べない現実がある。バイエルン対ドルトムントの「現代のクラシコ」は、その一方で、ブンデスリーグが抱えている問題点を表面化させた。