CLのドイツ勢対決は、現代のクラシコか?
ブンデスリーガを運営するドイツサッカーリーグのクリスチャン・ザイファート社長は言う。「ヨーロッパの目は今、すべてドイツに向けられている。しかし、我々が世界でナンバーワンのリーグかどうかは、これからの数シーズンを見てみないと分からない」。 この発言の背景には、世界4位の規模を誇るビッグクラブのバイエルンが、突出していくという“一強時代”への危惧がある。これまでブンデスリーガは、クラブ同士の力が均衡している群雄割拠を誇りにしてきた。その競争力がリーグを盛り上げ観客動員にもつながっていた。 しかし、今シーズンは、バイエルンが2位のドルトムントに勝ち点25差をつけて覇権を奪回。34試合で得点98に対し失点18。他ならぬバイエルンのウリ・へーネス会長が「このままでは、バルセロナとレアル・マドリーにしか優勝のチャンスのない、スペインのような状態になってしまう」と懸念を表明したが、2強時代どころか、ブンデスは、1強時代へ突っ走っている。ドルトムントを率いるユルゲン・クロップ監督が、こう皮肉った。 「今のブンデスはリーガではなくスコットランドのような状態だろう」 スコットランドでは、セルティックの戦力が抜け出ていて王朝を築き上げている。彼はセルティックとバイエルンを重ね合わせたのだ。 しかもバイエルンは、レアルやイングランド勢が億単位の借金をしてまでビッグネームをかき集めているのに対し、20年連続の黒字という健全経営を謳っている。豊富な資金力をバックにゲッツェを3700万ユーロ(約47億8000万円)という移籍金で来シーズンの目玉として獲得した。来シーズンからは、バルセロナの黄金時代を築き上げたジョゼップ・グァルディオラ監督が指揮を獲ることも決まっている。 「今シーズンの躍進は瞬間写真でしかない」と、現状に満足しないバイエルンのマティアス・ザマーSDは、さらなる補強を計画しているという。 そのバイエルンの独占時代をやっかむのはドルトムントの監督だけではない。23日に発売されたドイツ国内最大のサッカー雑誌『キッカー』では、興味深い読者アンケートの結果が発表されている。10万7552人もの読者が応答したチャンピオンズ決勝の結果予想は次の通りだ。 バイエルンが勝つ:53.5% ドルトムントが勝つ:46.5% これが「どちらを応援する」となると、数字は見事なまでに逆転する。 バイエルンを応援する:42% ドルトムントを応援する:58% 判官びいきは、どこのサッカーファンも同じ心理。バイエルンの独走を阻止するためにも、晴れの舞台でドルトムントにぜひとも頑張ってほしいというのがドイツ国民の本音なのだろう。ちなみに「ドイツはすでにヨーロッパのナンバーワンになっているか」という質問に対しては、実に76.7%が『Nein(No)』と答えている。 その理由は、ブンデスリーグ全体が底上げされているのではなく、「強いチームが偏っている」という現状を冷静に見ているのだろう。 (取材協力・円賀貴子/ベルリン在住ライター・コーディネーター)