「若い世代だけ報酬上げるのは…」 町に若手議員増やす狙いがなぜか「全員引き上げ」…理由は物価高、不透明な議会の議論に住民から不満の声
きっかけは若手議員を増やしてほしいと求める陳情
長野県飯島町の議員報酬を巡り、一律の引き上げが妥当とした町特別職報酬等審議会の答申に町民から異論が出ている。そもそものきっかけが、若手議員を増やして議会を活性化するため55歳以下の報酬増額を求めた陳情だったからだ。議会は若手の引き上げを含む3案を町に提案したが、審議会が一律引き上げを決めた理由は近年の物価高騰。町議や町民からは、曲折をだどった分かりにくい議論の経過に不満の声が上がっている。 【写真】発言者名が黒塗りになっている審議会の議事録
当初の引き上げ案は現行の8.9%増21万5600円
町の諮問を受け、9~10月に3回開かれた町特別職報酬等審議会。会長の堀内克美・元町会議長をはじめ、町の商工会や教育・農業関係者、民間のまちづくり団体などの代表7人が集まり、非公開で議論した。答申した報酬月額の引き上げ案は現行の8・9%増の21万5600円。信濃毎日新聞は情報公開請求で議事録を入手した。発言者は「個人情報に当たる」として黒塗りだった。
「若くても高齢でも同じ仕事をしている」目立った反対
目立ったのは、若い世代だけ議員報酬を上げることへの反対意見。「若い人も年齢の高い人も(議員は)同じ仕事をしている。若い人だけ上げるのはどうかと思う」といった具合だ。「一律引き上げの他に25~55歳に増額を考えてほしい」と求める発言もあったが、「次回の選挙の様子をみて、今後の検討事項で良い」と否定されていた。
30代の住民「不信感抱いた」
「元々、若手支援の方法を話し合う場だったはず。なぜ一律で引き上げる議論になったのか。不信感を抱いた」。町内の30代会社員女性は、一連の流れに納得がいかない。
陳情した区長の思い「議会は年配ばかりで…」
議論の始まりは2020年に町四区連絡協議会が提出した陳情だ。議会活性化へ定数削減や25~55歳の報酬増額を求めた。当時の協議会代表で元七久保区長の野原正明さん(80)は「議員は年配ばかりで、若い世代が議員になれるよう改革を求めた」と振り返る。一律の報酬引き上げという審議会の答申に「このまま決まるのは悲しい」と引き続き議論を続けるよう求める。
最終案は59歳以下が月額26万4千円、子ども1人当たり月額3万円の手当ても
陳情を受け、町議会は21年12月に議員定数報酬等検討小委員会(5人)を発足。住民アンケートも実施し、2年半以上かけて議会全員協議会(全協)に提出した最終案は▽定数は増減なし▽報酬は59歳以下が月額26万4千円に、60歳以上が現行の同19万8千円のまま▽子ども1人当たり同3万円の手当を付与―とする内容だった。