散策しながら季節を俳句に詠む。初めてでも楽しめる吟行のすすめ。
正門からの一本道を歩くと、両脇には山野の道端に生育する野草や木々が見られます。ふたりは、季節を感じる植物たちを愛でながら、小まめにメモを取ったり、カメラに収めたり。 犬山 花の咲く時季や香りや色など情報の部分はネットなどでも得ることができても、歳時記に載っていた季語を五感で味わう体験ができるのが貴重だなと。特に植物の場合は、こんなに可愛らしく咲く花なんだとか松の木肌がごつごつしているのが面白いとか、感覚ごと感情ごと記憶されるんですね。季語と直に触れ合う喜びがあります。 堀本 いままで、言葉や概念としてしか知らなかったものに、実体を伴って触れることができる。それは自分がいざ俳句を作るときにも、鑑賞するときにも、とても財産になるんですよ。季語に感情移入できるというか。 犬山 確かにそうですよね。字面で知っていたものと圧倒的に違いました。 堀本 いまは、YouTubeなどを見て俳句を作ったという人も多いんです。言葉でしか知らないものをせめて動画で見て補おうとしているのでしょう。たとえば蛍。動画で視覚的に「なるほど、こういうふうに光って飛ぶんだ」はわかるけれど、その上の段階というか、実際に蛍を見て得られる実感は、やはり動画を超えてくる何かがあると思うんです。
犬山 きょうは句会の代わりに、堀本さんに私の句を講評していただくの、楽しみですが、緊張もしています。 堀本 句会では自分の句を出すときは名前は伏せておくのが決まりですが、3人とかだとけっこうバレてしまうんです。句会をするなら吟行は4~10人ぐらいがいいでしょう。みんなで同じものを見る、その共通体験によって句の味わいも変わるのが面白いんですよ。 犬山 実は私、まだ俳句友だちがいないんです(笑)。ほかの人の句に触れるのも、まだ本を通してだけ。仲間が欲しいという気持ちは強烈にあるのですが、どうしたらいいでしょうか。 堀本 自分の友だちを俳句の世界に引っ張り込むか(笑)、いまはネットなどでもわりと句会は探せます。僕が都内で毎月開催している「いるか句会」は初心者歓迎です。ネットで募集しているのでリーチしやすいと思います。