もう一人の松坂世代。元広島、西武の木村昇吾がクリケット代表選考会に挑む
プロ野球からクリケットへ転身した元広島、西武の木村昇吾(37)が、今日17日から2日間、栃木県佐野市の 佐野河川敷クリケットグラウンドで行われる日本代表強化選手団の選考会に挑む。クリケットは、日本ではまだマイナースポーツだが、旧英国圏では超メジャースポーツで海外のプロリーグで活躍するトッププレーヤーは、最高年俸30億円を稼ぐ。海外でのプレーを目指す木村にとって、その第一歩が日本代表入りだ。もう一人の“松坂世代”木村の挑戦に注目が集まる。 「似て非なるもの」――。 木村は野球とクリケットを比べてそう言った。 打つ、投げる、走る、捕るは、野球と同じ要素だが、公式ボールは、野球の硬球より少しだけ小さく硬いラバー製で、木製バットは平べったく、1キロ以上あり野球のバットよりも重い。そして野手はグローブやミットなどを使わずに素手でボールを捕球する。 野球でいう投手の「ボウラー」は、肘を曲げて投げてはいけないルールだが、助走OKでワンバウンド投球が基本。必然、バットスイングは下から上へのアッパースイングとなる。 筆者が取材した全日本合宿では、全メニューを順調にこなした後に一人居残り特訓。オーストラリア人の日本代表コーチであるドゥーグル・ベディングフィールド氏の投げる様々な種類のワンバウンドのボールを打ち返しながら、クリケットのいくつかの打法の基本を教えられていた。 元日本代表で日本クリケット協会の上原良崇氏の声が飛ぶ。 「速いボールはミートスイング!」 「緩いボールは大きなスイングで飛ばしていいですよ!」 上原氏によるとクリケットには「50から60種類の打法が存在する」という。 そのひとつに真横に打つというクリケットの打法があった。野球でいうカット打法だ。 「野球ではファウル。でも、クリケットって戦略的に360度、どこへ打ってもいい。状況によっては、あえて、ファウルを打ってもOKなんだから面白いよね。できないことがあると、くそっと、やる気を増幅させてくれるよ」 必死に新しい技術を吸収しようとしている木村は、どこか楽しそうだった。 英国を発祥の地とするクリケットは、英国、オーストラリア、インドなどの旧英国圏で盛んで、その競技人口は、サッカーに次いで2位とも3位とも言われる伝統と格式のあるスポーツだ。インド、オーストラリアなどにはプロリーグがあって、特にインドでは、3万人を越えるスタジアムが満員となり、テレビ放映も高視聴率を誇り、選手の年俸は高額で30億円プレーヤーもいる。 一方、日本ではまだ競技人口は3000人に届かない。 クリケットのルールを簡単に説明すると1チームは11人。試合は横140メートル、縦130メートルの楕円形のグラウンド(国内では100メートル前後)で行われ、その中央に20.12メートルの間隔で2つの「ウィケット」と呼ばれる3本棒で作られた柵のようなものを置き、投手の「ボウラー」がボールを投げ、捕手の「ウィケットキーパー」と、野手の「フィールダー」の9人が守る。 攻撃側は打者の「バッツマン」が2人。「バッツマン」は打撃後、反対側のウィケットへ走り、待機していたもう1人のバッツマンが反対側へ走り、野手が返球してウィケットを倒す前に、両者がウィケットに到達すれば1点。打者は、ウィケットを倒されない限り何度でも空振りOKで打ち直しも可能だ。打球をノーバウンドで取られればアウト。ウィケットを倒されてもアウト。 試合の進行は打者が10アウト、あるいは投球数によって攻守交代していくが、試合時間は様々。投球数が制限され3時間ほどで終わる形式のものから、5日間にわたって行われるテストマッチまである。