もう一人の松坂世代。元広島、西武の木村昇吾がクリケット代表選考会に挑む
では、その可能性は? オーストラリアのクラブチーム(4軍)でプレー経験のある上原氏の説明によると海外のプロリーグのチームにトライアウトは存在せずスカウトされることが大前提だという。 「チャンスはいくらでもあります。最短で言うならば、日本でクリケットを覚え、すぐに海外へ送り出す。海外の春のリーグ戦に間に合い、そこで結果を出せば、次の年からプロ契約は可能なんです。私はプロでやるならバッティング1本に絞った方がいいという考えです。クリケットの打法には、50、60種類の打ち方が存在しますが、何ができて、何ができないかを取捨選択して、何で勝負するかを磨くのです。ひょっとすれば、10個の技術でプロになれるかもしれません。プロ野球は、頂点を極めた人の集まりです。その能力にかけたいですね。日本クリケット協会も全面バックアップしていきます」 足がかりは、上原氏と同じくオーストラリアでの下部のクラブチームでのプレーチャンスをつかむことにありそうである。 木村には、日本人初となる海外でのクリケットプロ選手としてのプレーだけでなく、もうひとつの使命がある。プロ野球界のセカンドキャリアの道作りだ。 「僕が成功例を作り、後に続くものが出てこないと意味がない。成功したらではなく、成功させないといけない」。日本クリケット協会は、NPBとも連携を取り、過去にトライアウト視察に出たこともあり、木村の成功を日本のクリケット普及につなげたいという狙いもある。 “松坂世代”である。松坂大輔は、中日で再起に賭け、村田修一はルートインBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスに入団してNPB復帰のチャンスを窺っている。 「松坂世代と呼ばれる僕らの長が大輔なんだ。僕が大輔を語るなど、おそれ多いことだけど、彼がいたから、僕も、松坂世代のはしくれの一人に入れてもらえる。僕は、違う競技に進んだが、頑張るということは、みんなどこで何をしていても変わらない。何をしても頑張るのは当然のこと。彼が頑張るのなら、僕らも頑張るのは、当然のことだよね」 もう一人の松坂世代の挑戦の第二章は始まったばかりである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)