もう一人の松坂世代。元広島、西武の木村昇吾がクリケット代表選考会に挑む
木村は昨年オフに西武から戦力外通告を受けた。尽誠学園から愛知学院を経て2002年のドラフト11位で横浜へ入団。横浜から広島へトレードされ8年間プレー、ショート、サードのレギュラーを確保したこともあり名バイプレーヤーとして存在感を示す。西武移籍後に右膝前十字靭帯断裂の大怪我を負ったが、育成で再契約。それでも、昨年はわずか3試合出場にとどまり、オフにはプロ野球12球団合同トライアウトに参加している。 膝の故障の完治をアピールしたがNPBのチームからは声がかからなかった。独立リーグからは兼任コーチとしてオファーがあったが、同時にパイオニアとなれるプロ野球からの転身組を探していたクリケット側から知人を通じてアプローチがあった。 木村は未知なる世界へ飛び込むことを即決した。 「面白いな、と単純に思った。二番煎じはつまんないけど、誰もやっていないことだから面白いじゃない? 体は動くし、まだまだ、いけると思ったので、トライアウトを受けたが、評価は違った。それが現実やないですか。結果は受け入れるしかない。でもクリケットなら面白い。野球をこんなに生かせる競技はない」 ただプロ契約を結ぶまでクリケットで収入を得ることはできない。現在はスポンサーを募集中だ。 不安の多いチャレンジだが、家族は背中を押してくれたという。 「今は、無償だけど、お金は、なんとかなるでしょう(笑)。すぐに何千万をもらえるとは思っていない。でも、そこを目指す」 37歳という年齢への不安もない。 「心が体を動かす」。プロに入った横浜時代にもらった言葉をずっと大事にしている。 「心も体が動くからやると決めた。年齢は関係ないでしょう」 全日本の合宿参加に先立ち、体力測定が行われたが、10代の学生の参加メンバーもいる中、木村の数値は、いずれもトップクラス。マンツーマンで指導にあたっている上原氏は、「この体で本当に37歳ですか?」と思わず聞き返したという。 「海外では30代の後半でトップを張っているプロもいます。年齢は、ハンデにはなりません」と上原氏は言う。そして、こう続けた。 「センスはズバ抜けていますね。クリケットはルール上、飛ばすことが重要で、木村さんは当たれば飛びます。アスリートとして高レベルにあります」 クリケットは、直接のオーバーフェンスで「6点」、バウンドしてもオーバーフェンスすれば「4点」が入るため「飛ばし屋」が重要視される。プロ野球ではシェアな打撃が持ち味だったが、クリケット界では「飛ばし屋」の部類に入る。