財政再建に必要な消費税は何%? 「限界」近づく財政 法政大学・小黒一正准教授に聞く
アベノミクスの“副作用”は?
また、アベノミクスの金融政策にも懸念を示す。現在、長期金利が上がらないのは、異次元緩和の影響も大きいと指摘。160兆円を超すお金が現在日銀の当座預金にあるが、これらのお金が何かのきっかけで回り始めた時が非常に危険だという。 「まだその160兆円が眠っているからいい。ただ、今は部屋の中に油をいっぱい充填させている状態。火がつかないうちはいいが、仮に何かのきっかけでお金が回り始めた時に銀行がそのお金を使い始める可能性も否定できない。そうすると、デフレ脱却はできるが、インフレを止めにくくなる。貸し出し競争みたいになると、もう日銀がコントロールすることができない。状況は異なるが、例えば、ブラジル中央銀行がインフレ目標を設定して金融引き締め政策を実施しているが、高いインフレ率の封じ込めには成功していない」 小黒氏はインフレをコントロールする難しさを指摘する。「異次元緩和でなくても、インフレ自体を止めることは難しい。金利を上げればいいという声もあるがそんな単純じゃない」。 第2次世界大戦後のイギリスが、対GDP比の政府債務が2倍を超えていたが財政破綻しなかった例については、対GDP比で年間平均3.6%に達した「金融抑圧税」を35年間続けることで過剰な政府債務を圧縮した可能性が高い、とのカーメン・M・ラインハートらの研究を紹介して反論する。 ただ、このイギリスのケースは、日本の現状には当てはまらないという。「イギリスの場合は、あくまで戦費調達が債務の要因だったので、戦争が終わった瞬間に債務の膨張が止まった。でも今の日本の場合は違う。債務が増える大きな要因は社会保障費なので、高齢者がいる限り増え続ける。だから潜在的なマグマはどんどん溜まっていく」 コントロールできないインフレが起こったら、現在の日本でソフトランディングできる保証はない。小黒氏は「いまの痛み」か、「近い将来のより大きな痛みか」と警告する。