財政再建に必要な消費税は何%? 「限界」近づく財政 法政大学・小黒一正准教授に聞く
1年半くらい遅れても問題ない?
では、8%から10%への「2%」の消費税率アップが1年半遅れたところで、さほどの影響がないのかといえば、決してそうではないと小黒氏は語る。 「消費税の引き上げが遅れれば遅れるほど、財政を安定化させるために必要な税率は大きくなる。今回2%を先送りしたが、そうすると今度同じ効果を出すためには、2014年7月に2%引き上げるだけでは足りない」 ブラウン氏らの試算では2017年に一気に税率を上げたとして33%が必要と推計したが、これが2022年に引き上げとなると、同じ効果を出すには37.5%の税率が必要になるという。その差は4.5%。つまり、1年引き上げを遅らせると0.9%になる。「だいたい消費税1%分とすると、だいたい2.5兆円から2.7兆円くらい。それと同じ規模の増税か社会保障の削減が必要になるが、これは相当難しい」(小黒氏) 小黒氏は、財政は限界に近づいており、再建のために残された時間は少ないという。 ブラウン氏らの別の研究で、増税や社会保障改革を実施せずに先送りした場合、対GDP比の政府債務を発散(限りなく膨張すること)させないため、消費税率を100%に上げざるを得なくなる「ぎりぎりの年」を推計している。それによると、消費税率が10%なら2032年、5%なら2028年まで、となった。ブラウン氏らの試算にはないが、今現在の日本は8%なので、「『2030年ごろ』が限界の年となるはず」と小黒氏はいう。 「でも消費税100%なんて無理。社会保障の抑制を同時に行ったとしても国民からは悲鳴が上がる。2017年に上げたとしてもたかだか10%。その先13年しかない。その間に残り20%分の改革ができるかといったら相当難しいはず」 ただ2030年にすぐ財政が破綻するわけではない。あくまで「改革できる最後の年」という位置づけで、「その後、走って行っていつか破綻する」(小黒氏)