財政再建に必要な消費税は何%? 「限界」近づく財政 法政大学・小黒一正准教授に聞く
安倍晋三首相は先月、消費税率10%へのアップを1年半先送りすることを表明し、衆議院を解散した。そして、12月14日の総選挙は、アベノミクスの推進を訴えた自民党と公明党の大勝で終わった。24日に発足する第3次安倍内閣はアベノミクスを今後さらに加速させ、2017年の消費税10%引き上げへの経済環境を整備することになるが、この増税先送りには、景気面の観点から評価する声がある一方、財政再建への取り組みが遅れることを懸念する声もある。 ただ、元財務官僚で財政問題に詳しい法政大学准教授・小黒一正氏は、「消費税10%でも『止血剤』程度」だと話す。では一体、財政再建にはどの程度の消費税アップが必要なのか。財政をめぐる現状はどうなっているのか。小黒氏に聞いた。
「30%以上」必要との推計
どれくらい消費税率をアップすれば政府債務(対GDP)の膨張をストップできるのか。いくつかの試算がある。 現在、国の借金は1000兆円を突破し、2015年3月末には1100兆円超に膨らむとみられている。そして、約110兆円の社会保障給付費(年金・医療・介護)は毎年約2.6兆円ずつ増え続けている。米アトランタ連銀のアントン・ブラウン氏らの研究によると、社会保障費を抑制せず、財政安定化のために2017年度に一気に消費税率を引き上げる場合、最終税率は33%になるという。同じような研究で、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のゲイリー・ハンセン教授らは35%と推計している。また、小黒氏と慶応義塾大学の小林慶一郎教授は、2050年ごろの消費税率を約31%と推計している。 現在、政府と日銀は、インフレ率2%の実現を目指している。それによって増税を避けるという論調もあるが、ブラウン氏らはインフレ率2%を達成した状態での試算も行っている。他方、消費税率を5%ずつ5年おきに段階的に引き上げていく場合、年金の所得代替率を30%にまで削減し、高齢者の窓口負担を2割にするなど厳しい社会保障改革を実行したとしても、ピーク時の消費税率は32%に達するという。 いずれの推計でも、30%以上の消費税率でなければ財政の持続性は維持できないとの結果だった。