「空間と作品」展(アーティゾン美術館)レポート。あの作品はどのように生まれ、誰が持ち主だったのか? 作品が見てきた景色に思いを馳せる展覧会
画面と空間をつなぐ存在としての額縁
4階では、画面を支持して守るだけでなく、画面と空間をつなぐ存在しての額縁や表装裂(表具に使われる布)に注目。 最初の展示室にずらりと並ぶマティスの作品も、様々な額縁に支えられている。娘をモデルにした《麗子像》で知られる岸田劉生は、「劉生縁」という呼称があるほど額物にこだわったという。藤田嗣治は自ら額縁を制作したことでも知られている。 また古美術の表具に注目した展示室には、鈴木其一が表装部分、師匠の酒井抱一が中を描いた掛け軸や、昨年の修復時に表装の見直しを行ったという《鳥獣戯画断簡》、さらには豊臣秀吉の書翰も公開。 また、モネ、レンブラント、シスレー、コローらの作品が並ぶ展示室では、彼らの作品を通して、多様な額縁の様式を紹介。さらに、ロートレックやジャコメッティ、藤田の作品など、美術館側で額を新調した作品についても、その背景解説とともに展示されている。 なおアーティゾン美術館では、本展よりリニューアルした、新たな美術館公式音声ガイドアプリの提供を開始。新しいアプリでは画像認識技術を取り入れ、鑑賞者がQRコードなどではなく、作品に直接カメラをかざすことで、音声ガイドを視聴したい作品を選択できる。 本作の展示作品はすべて石橋財団のコレクションで構成されている。作品そのものではなく、その誕生背景や継承の歴史、展示空間に着目することで、コレクションに新たな光を当てる試みだ。制作の依頼主はどんな人だったのか、自分だったらどのように飾るか、など想像を膨らませながら美術館を巡ってほしい。
Minami Goto