セザール・トロワグロが語る、世代を超えて受け継がれる“料理芸術”の系譜とは
── 今後、どういう料理人になりたいですか? 例えば、新しいレシピを生み出していきたい、あるいはビジネスマンとして経営を拡大したい、環境を守り、自然と人をつなぎたいなど。 セザール お客様に近くて、家庭的なエスプリ(精神)を大切にする料理人です。フランスのガストロノミー界では、経済が低迷しています。独立したオーナーシェフがどんどん減ってきています。大きなグループや高級ホテルに対抗するのが商業的にとても難しい。資金力に差がありますからね。たった一つ対抗できるとしたら、メゾンや協力してくれる人を大切にするなど、エスプリの術です。それこそ大きなホテル業者、ビジネスマンができないことです。私たちはもともとそういったエスプリを大切にするようにできていますから自然にやっているのですが、今後さらに強調していきます。違いがはっきり出るのはこの点だからです。 ── 現在、日本にトロワグロのレストランがありません。今後、チャンスが来たら、出店したいと思いますか? セザール ええ、もちろんです。そのプロジェクトについて話し合っていますよ。いくつかコンタクトも受けていますし。でも私たちの新しい店を日本に開店するとしても、ガストロノミーの店ではありません。そういった店はすでに十分ありますから商業的な意味でもうまくいかないでしょう。ですから、私が開店したいのは、とてもクオリティが高いけれど、同時にシンプル、カジュアルで、いいレストランだけどミシュランの星を狙うようなものではない。立地も大切です。活気のある地区にあって、都会の生活、歩行者専用の道があって、店が道に開いていてヨーロッパの雰囲気がある。そんな店を出したいですね。
セザール・トロワグロ
1986年ロアンヌ生まれ。三代目ミシェル・トロワグロと妻マリー=ピエールとの間の長男。高校卒業後、ポール・ボキューズ学院で料理を学ぶ。卒業後、パリのミシェル・ロスタン、カルフォルニアのトーマス・ケラーの店などで腕を磨く。1年間の日本滞在を計画していたが、訪日直前に東日本大震災が起き、断念。トロワグロの店で働き、2022年メゾンのガストロノミー(高級美食料理)の邸宅レストラン「ル・ボワ・サン・フォイユ」を四代目として継いだ。