自転車の交通ルール。横断歩道は走行していいの? ~弁護士に訊いてみた~【クルマと法律vol.10】
交通問題やクルマに関する相談について、法律の見地から分かりやすく解説する連載「クルマと法律」。今回は、自転車を運転しているときの交通ルール。自転車に乗ったまま、横断歩道を通行していいのかを弁護士・芳仲美恵子先生に聞きました。 【画像で解説】回答の要約を知りたい方はこちらでチェック! 今回の相談はこちら 「自転車に乗って走るとき、横断歩道を通行してもいいのでしょうか? そもそも歩道を通行してもいいのでしょうか?」
自転車は横断歩道を通行してもいい?
相談者:自転車で走行する場合、クルマと歩行者どちらの交通ルールに従えばいいか分からなくなるときがあります。自転車に乗ったまま横断歩道を通行してもいいのでしょうか。 芳仲弁護士:可能です。道路交通法(以下「道交法」という)上、自転車は「車道」走行が原則です。しかし、例外的に「歩道」走行が許されている自転車がそのまま「横断歩道」を走行して道路を横断することは、むしろ道交法が想定しているところといえましょう。 相談者:そうなのですね! 「車道」走行が原則なのに、例外的に「歩道」を走行できるのですか。ややこしいですね。 芳仲弁護士:全くその通りですね。普段の生活で多くの方が利用する自転車は、ほぼ、道交法施行規則9条の2の2以下で定められている「普通自転車(道交法63条の3)」だと思われます。そのため、ここでは「普通自転車」を単に「自転車」と呼んで話を進めたいと思います。 【普通自転車とは】 一般に使用されている自転車で、車体の大きさ及び構造が下記の基準に適合する自転車で他の車両をけん引していないもの。 ■車体の大きさ 長さ:190cm以内 幅:60cm以内 ■車体の構造 ・4輪以下であること ・側車をつけていないこと(補助輪は除く) ・運転者以外の乗車装置を備えていないこと(幼児用乗車装置を除く) ・ブレーキが、走行中容易に操作できる位置にあること ・歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと 相談者:自転車にも種類があるのですね。わかりました。 芳仲弁護士:まず、「車道」通行が原則であることについて説明します。道交法の規定で自転車は「軽車両」にあたり(第2条第1項第11号イ)、「軽車両」は「車両」にあたります(第2条第2項第8号)。つまり、道交法上において自転車は「車両」にあたります。自転車を押して歩いている者は「歩行者」として扱われますが(第2条第3項第2号)ここでは考えないことにしましょう。 相談者:わかりました。基本的に自転車は「車両」なのですね。 芳仲弁護士:はい。そして、「歩道」と「車道」の区別のある道路(以下「歩車道の区別のある道路」という)においては「車両」は、車道を通行しなければなりません(第17条第1項)。自転車も「車両」である以上、「車道」を通行しなければならないのが原則なのです。 相談者:そうなのですか! 知りませんでした。 芳仲弁護士:そうです。ただし、道交法上の例外として、「自転車横断帯」がある場所の付近で「自転車」が道路を横断しようとするときは、その「自転車横断帯」を通行しなければなりません(道交法63条の6)。その場合、自転車は「車道」は走行できません。もちろん付近に「横断歩道」があっても、そこを走行することはできません。 相談者:なるほど。「自転車横断帯」があるときは、自転車はとにかくそこを走らなければならないのですね。 芳仲弁護士:実態はともかく、道交法上はそう規定されています。ちなみに「横断歩道」と「自転車横断帯」は、道交法上で下記のように定義されています。 【横断歩道と自転車横断帯の定義】 横断歩道:道路標識等により歩行者の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分をいう(道交法2条1項4号) 自転車横断帯:道路標識等により自転車の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分をいう(道交法2条1項4号の2)