自転車の交通ルール。横断歩道は走行していいの? ~弁護士に訊いてみた~【クルマと法律vol.10】
例外的に歩道通行可能な場合がある
相談者:原則は「車道」通行といっても、都心では自転車が「歩道」を通行していいという道路標示がされていて、多くの自転車が「歩道」を走行しているのを見かけます。 芳仲弁護士:そうですね。子どもや高齢者などが街中で自転車に乗る場合など、自転車が「車道」を通行することはむしろ危険な場合もあります。よって、以下の(1)から(3)の場合には、例外として自転車も「歩道」を通行することが許されているのです(道交法63条の4)。 【自転車が例外的に歩道通行できる場合】 (1)道路標識等により普通自転車の歩道通行が可とされている場合 (2)当該自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき(道交法施行令26条、規則9条の2の3で、70歳以上の高齢者、一定の身体障害者等が定められている)。 (3)車道や交通の状況に照らして当該自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。 相談者:確かに、このように例外的に歩道通行が許されている自転車が、交差点にさしかかれば、そのまま「横断歩道」を走行して道路を横断することが必要ですよね。 芳仲弁護士:そうなります。
横断歩道は歩道ではない!?
相談者:つまり、「横断歩道」も「歩道」だから、例外的に「歩道」通行を許された自転車が通行できるということなのですね? 芳仲弁護士:いいえ、違います。実は、道交法上において「横断歩道」は「歩道」ではないのですよ。 相談者:横断歩道は歩道ではないとは、どういうことですか? 芳仲弁護士:道交法は、「歩道」と「車道」について以下のように定義しています。 【歩道と車道の定義】 歩道:歩行者の通行の用に供するため縁石線又は柵その他これに類する工作物によって区画された道路の部分をいう(道交法2条1項2号) 車道:車両の通行の用に供するため縁石線若しくは柵その他これに類する工作物又は道路標示によって区画された道路の部分をいう(道交法2条1項3号) 芳仲弁護士:つまり「車道」は、道路が道路標示で区画されていれば足ります。しかし「歩道」は、歩行者の通行の安全を確保するという趣旨から、縁石や柵(ガードレール)、その他の工作物で物理的に車両が簡単に出入りできないことが重要な要素となっているのです。単に道路鋲とかペイントによる塗装等によって区分されたに過ぎない「横断歩道」は、道交法上の「歩道」とはいえないのです。 相談者:なるほど。では、道交法上の「横断歩道」とはどういうものなのですか? 芳仲弁護士:道交法では「横断歩道」は以下のように定義されています。「横断歩道」は、車両と歩行者の通行が交錯する場所に設置されるものですから、歩行者の安全の観点からは「歩道」とは同視できないということでしょうね。 【横断歩道の定義】 横断歩道:道路標識又は道路標示(以下「道路標識等」という)により歩行者の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分をいう(道交法2条1項4号) 相談者:そう言われると確かに、「横断歩道」の上をクルマも通過しますね。 芳仲弁護士:ちなみに道交法10条2項1号も、歩行者は「車道」を横断するとき”以外”は「歩道」を通行しなければならないと定めています。裏を返せば、歩行者が「車道」を横断するときは「歩道」を通行しなくてもよいと定めている訳です。つまり、この規定も道交法が「横断歩道」を「歩道」ではないと捉えていることの表れといえると思います。 相談者:そうか、「横断歩道」は厳密には「歩道」ではないので、自転車も通行できるということですね。私は、「横断歩道」という呼び名からして、「歩道」の一種なので、原則として自転車は通行できないのだと思ってしまいました。