「今までの方が使いやすい」「紛失怖い」 マイナ保険証移行、高齢者集う団地で聞いた本音
医療機関の受診時に提示する健康保険証の新規発行が2日から停止となった。マイナンバーカードに保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」への移行が本格化するが、高齢者からは「今までの方が使いやすい」「紛失が怖い」との困惑も広がり、政府の情報発信も課題となりそうだ。高齢の住民が多い東京都新宿区の都営集合住宅「戸山ハイツ」で話を聞いた。 【写真】健康保険証の代わりにマイナンバーカードを利用するための読み取り機 ■使えるうちは今の保険証を使う 「何でもマイナンバーに変えられちゃうと年寄りはついていけない」。こう語るのは、主婦の福田徳子さん(75)。「今までの方が使いやすい」と、マイナンバーカードは作成しておらず、現在も医療機関では健康保険証で受診している。 厚生労働省によると、マイナンバーカードを作っていない人やマイナ保険証の利用登録をしていない人でも、最長で1年間はこれまで通りの健康保険証が利用可能。その後も加入している医療保険の保険者から送られる「資格確認書」があれば、医療は受けられる。 福田さんは「個人情報が流出したり、他人の情報が誤って登録されたりするトラブルもあると聞いて怖い。どうしてもダメなら変えざるを得ないが、使えるうちは今持っているものを使う」とマイナ保険証への移行には慎重な考えだ。 ■カード発行「こんなに時間かかるのか」 一方、無職の70代の男性は約3年前にマイナンバーカードを作成したが、マイナ保険証の利用登録はまだだという。 「いろんな情報をカードにまとめると、紛失したときにどうしようもなくなる」とカードは持ち歩いていない。移行の判断は「周りの状況を見ながら考えたい」と話した。 主婦の広野よし子さん(86)は、2日で健康保険証の新規発行が終了するのを前に、3カ月前、マイナンバーカードの作成手続きを終えた。ただ、カードが手元に届くのは来年2月末だといい、「こんなにかかるのか」と困惑した表情を浮かべていた。 戸山ハイツは高齢化率が5割を超え、地域社会の共同生活が難しくなる「限界集落」の団地。(塚脇亮太)