シーズン中の電撃移籍は消滅?!今一度大谷翔平のトレードの可能性を検証してみた…トラウトの動向まで連鎖
だが、大谷をトレードするとしたら8月7日に31歳となるトラウトもトレードを要求する可能性がある。チームを再建するには3~4年かかる。その間、トラウトはさらに全盛期を無駄にすることになる。すでに何年も彼は我慢してきた。ただ、大谷、トラウトを失えば、エンゼルスは一気にファンも失うだけに、そこまで見据えれば、大谷を動かすことの難しさが透ける。 もっとも、トレードにはトラウトのように拒否権があるわけではないので、大谷にもリスクが伴う。どこまで二刀流が認められるのか。エンゼルスを選んだ決め手は、その部分への理解だったが、チームを選べないということは、また先発前後は試合に出られないなど、二刀流としての起用に制限がかかる可能性がある。 1年我慢すればFAだが、トレードで獲得するチームは長期契約を含み犠牲を払うわけで、大谷との再契約が見込めない限り、交換要員を出し渋る。交渉がもつれれば、妥協を迫られるのは大谷ということになる。 まずは、今オフの再契約交渉で、チームが大谷にどんな将来図を示せるか。納得させられる案を提示した上で条件がどうなるか。すでに触れたようにシーズン中の交渉は現実的ではなく、FAになられたらエンゼルスとしては再契約の可能性が下がるので、来年の開幕が、その交渉期限かもしれない。 それまでに合意できなければ、冒頭でも指摘した通り、早ければ今オフ、遅くとも来年の7月までにトレード、ということが考えられるが、その場合はトラウトの意向も無視できず、エンゼルスは難しい舵取りを迫られる。 モレノ・オーナーが「予算など気にするな」と言えば、すべては解決しそうだが、それも難しい。それよりはまもなく76歳になる彼がチームを売却し、資金力の豊富な人物がオーナーに就き、年俸総額の上限を取っ払ってくれる方が可能性としては高い。モレノ・オーナーの子どもたちは、すでに球団経営には興味がないことを公言しており、球場周辺の再開発計画も、前アナハイム市長のハリー・シドゥー氏の汚職疑惑で頓挫したばかり。タイミングとしては、何が起きてもおかしくない。 そこまで俯瞰(ふかん)すると、大谷の去就は、モヤモヤとして描ききれないエンゼルスの未来図を象徴するようでもある。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツジャーナリスト)