なぜ高木菜那は“呪われたコーナー”で転倒の悪夢を繰り返してしまったのか…左足に蓄積した疲労とブレードに異変発生の可能性
北京冬季五輪のスピードスケート女子マススタートが19日、国家スピードスケート館で行われ、平昌五輪金メダリストの高木菜那(29、日本電産サンキョー)が最終コーナーで転倒。15日の団体パシュート決勝に続く悪夢に見舞われて1回戦で敗退した。 スピードスケートで唯一、タイムではなく得点制で争われるマススタートで、序盤、中盤と上手く流れに加われなかった第2組の高木は最後の16周目でスパート。トップを切ったが団体パシュート決勝とほぼ同じ場所となる“呪われたコーナー”でバランスを崩し転倒、14位に終わり、2組の上位8人ずつが進む決勝のスタートラインに立てなかった。 決勝ではイレーネ・スハウテン(29、オランダ)が3000m、5000mに続く今大会3つ目の金メダルを獲得。佐藤綾乃(25、ANA)は8位に入り、男子6位の土屋良輔(27、メモリード)、8位の一戸誠太郎(26、ANA)とともに入賞を果たした。
「(五輪には)何かがいるかもね」
今大会最後のレースに臨む姉を後押ししようと、スタンドに駆けつけた高木美帆(27、日体大職員)がレース後にかけた言葉がすべてを物語っていた。 「何かがいるのかもね、と言われました」 レース後に言葉を交わした妹が言及し、思わず高木もうなずいた場所は最終コーナー。五輪に棲む“魔物”にまたもや魅入られ、ゴール目前で転倒を喫した高木がコース外のマットに叩きつけられた瞬間に、五輪連覇の夢が無情にも絶たれた。 美帆が先頭に立つ隊列の最後尾を滑っていた、15日の団体パシュート決勝でも最終周のほぼ同じ位置で転倒した。しかし、銀メダルを手にした4日前とは異なり、スピードスケートの最終種目となるマススタートの記録は1回戦敗退。決勝のスタートラインに立てずに終えた胸中を高木は涙を流すことなく、しっかりと言葉で紡いだ。 「オリンピックで滑る最後のレースをしっかりと楽しみたいと気持ちを切り替えて、気合いを入れていったんですけど、最初から自分が思ったようなレース展開ができなかった。上手くいかないことって続くのかな、と思っています」 スピードスケートの個人種目で唯一、フィニッシュ時のタイムではなく得点制で争われるマススタート。正式種目になって2大会目の北京冬季五輪1回戦の女子では、28人が2組に分かれてそれぞれ一斉にスタートし、普段はレースでは使われない、最も内側のウォームアップレーンも開放されたなかで400mのリンクを16周する。 1600m、3200m、4800mの通過時に上位3人へそれぞれ3点、2点、1点が与えられるレースで、第2組で臨んだ平昌五輪金メダリストの高木は徹底的にマークされた。