“鉄人”高木美帆が北京五輪13日間で7レース1万3200m滑り抜いた最後に金メダルがあった理由とは?
北京冬季五輪のスピードスケート女子1000mが17日、国家スピードスケート館で行われ、エース高木美帆(27、日体大職員)が1分13秒19の五輪新記録をマークして金メダルを獲得。個人種目で表彰台の真ん中に立つ悲願を成就させた。 今大会5種目目、通算7レース目の高木は、最初の200mをトップタイの17秒60で通過。600mの通過タイムこそ銀メダルのユッタ・レールダム(23、オランダ)に100分の1秒遅れたが、最後の400mでは再び最速の28秒71をマーク。スプリント力と持久力、スタミナを融合させて1分13秒83のレールダムに0秒64差をつけた。 1500m、500m、団体パシュートの銀メダルに続く4個目のメダルを手にした高木は、通算メダル数でも夏季五輪を含めた日本女子選手で歴代最多となる「7」に更新。世界記録保持者のブリタニー・ボウ(33、アメリカ)が1分14秒61で銅メダルを獲得。平昌五輪銀メダルの小平奈緒(35、相沢病院)は1分15秒65で10位だった。
「最後の種目で渾身のレース」
13日間で7レース目、トータルでリンクを33周も回る1万3200mを滑り終えた鉄人を待っていたのは、疲れ切っていた全身を駆けめぐる達成感だった。 フィニッシュラインを滑り抜けた直後。電光掲示板を介して五輪記録更新を知った高木はフードをかぶったまま両手を突き上げ、右手でガッツポーズを繰り返した。 深夜に出演した民放各局のニュース番組で、高木はさまざまな思いを明かしている。 「もしも他に私のタイムを上回る選手がいても悔いはない、と思える内容のレースができました。もちろん金メダルを獲れたことも嬉しいですけど、それ以上に最後の種目で渾身のレースを、いまの段階でこれ以上はできないと言えるレースができたので」 第13組を終えた段階でトップに躍り出た高木の1分13秒19に、続く第14組の小平も、最終第15組のボウも届かない。個人種目で悲願の金メダルを手繰り寄せた高木は、日の丸を誇らしげに掲げたウイニングランの途中で、ナショナルチームのヨハン・デビット・ヘッドコーチと抱き合いながら歓喜の涙を頬に伝わせた。 「今回のオリンピックの最初のころは、つらいことがたくさんあって。ヨハンがいなかったのもそうですし、調子が上がりきらないまま3000mと1500mに挑みましたけど、最後にこうなったことで嬉しさが倍増というか、形になって残ったと思うので」 スピードスケート王国オランダから招聘された2015年から、個人的にも師事してきたデビット・ヘッドコーチの新型コロナウイルス感染が北京入り後に判明。不安を抱えたまま5日の3000mと、世界記録を持つ7日の1500mへ臨んだ。 結果は前者が6位で、個人種目での金メダル獲得の本命にあげられていた後者が銀メダル。自分自身に対して悔しさを抱いていたと高木は打ち明けている。 「周りから見たスケーティングはそれほど悪いものではなかったと思いますけど、自分のなかでは納得できないものがあって。そのままレースを迎えることへの不安もそうですけど、その時点で自分に対して感じている悔しさみたいなものがあって」