被疑者A氏はその時間に犯行現場付近にいませんでした!?犯人捜査から素数の個数まで…矛盾を導くことで証明する「背理法」の簡単な考え方
お遣いに行った兄妹の嘘はなぜバレたのか?
次の例は、拙著『昔は解けたのに……大人のための算数力講義』で紹介した小話である。 ある日、お母さんは小学生の兄と妹に、「今日は家でパーティーがあるのよ。5千円札を渡すから、270円のお弁当を7個と、他に60円のお団子と90円の草もちも適当に混ぜて買ってきてちょうだい」、とお使いを命じた。 お団子屋さんに着くと兄は妹に「お釣り、ちょっとごまかして、二人で100円ずつもらって、近くのコンビニで1本100円のアイスキャンディーを1本ずつ買って食べない? どうせママは算数が苦手だし忙しいからバレないよ」と言ったところ、妹は「お兄ちゃん、ちょっと悪いことだけど、一緒に仲良くアイスキャンディーを1本ずつ食べたいね」と返事をした。 結局二人は、270円のお弁当7個と、60円のお団子と90円の草もちをそれぞれ18個ずつ買って、中が見えないように袋に入れてもらった。それらの合計金額は 270×7+60×18+90×18=4590(円) となり、二人はお釣りの410円から200円をこっそり取って、コンビニで1本100円のアイスキャンディーを1本ずつ買って食べて帰った。 二人は帰宅すると直ぐに、「お母さん、袋の中にお団子と草もちとお弁当が入っています。ハイ、お釣りの210円です」と言って、お母さんに210円を渡した。するとお母さんは袋の中を見ることもせず、いきなり「ちょっと、二人は私に嘘を言っているでしょ」と叱った。 なぜ、お母さんはそのように叱ることができたのだろうか。
値段とお釣り、倍数に注目すると
それは、お弁当とお団子と草もちの値段はどれも30円の倍数である。そこで、合計代金も30円の倍数になる。そして、お釣りの210円も30円の倍数である。 したがって、それらを合わせた合計金額も30円の倍数になるが、5000円は30円の倍数ではないので、矛盾である。それゆえ、お母さんは二人の嘘を見抜いたのである。 要するに上の議論では、「二人は正しいお釣りをお母さんに渡したならば、お釣りは30円の倍数でない」ということを説明している。しかしお釣りは30円の倍数なので矛盾である。したがって、「正しいお釣りをお母さんに渡していない」が導かれたのである。